警察庁が公表した令和7年の来日外国人(永住者などを除く)で犯罪で摘発された総検挙人員1万2777人の国籍をみると、ベトナムが4167人(構成比率32.6%)、中国が2062人(同16.1%)、フィリピンが714人(同5.6%)、タイが642人(同5.0%)、ブラジルが561人(同4.4%)等となっている。

 ムスリムが多いインドネシアも499人で3.9%しかない。今、日本で罪を犯している外国人は圧倒的に「非ムスリム」が多いのだ。

 断っておくが、ムスリムは善良で、ベトナム人は犯罪者が多いなどと言いたいわけではない。

 ベトナム人の検挙数が多いのは、日本に滞在している人の数が圧倒的に多いことに加えて、技能実習生という「現代の奴隷制」によって、低賃金重労働を強いられている若者が借金などを抱えることで悪事に走ってしまうという構造的な問題もあるのだ。

 ただ、どういう背景があるにしろ、日本人が「被害者」となる犯罪・違法行為にはこれらの国の人が多く関わっており、ムスリムの関与は圧倒的に少ない、という動かしがたい「事実」があるのだ。そんな超マイノリティの人々を「犯罪者集団」扱いして、テロや性犯罪の恐怖を煽るのは理にかなっていない。

 にもかかわらず、それに心血を注ぐということは、何かしらの「得」があるからではないか、と言いたいのだ。

「宗教施設が犯罪の隠れ蓑になるからだ」というのなら、在日ベトナム人の急増とともに近年増えている「ベトナム寺院」も問題視しなくてはいけないが、そっちはスルーして、モスクだけ恐怖を煽っているのも不自然だ。

 先ほどの店田広文さんらの調査でも、2025年7月現在で日本国内には165のモスクがある。反対派が主張する「モスクができると治安が悪化する」「近隣の女性はレイプされる」というのが、もし事実として存在するのならば、なぜこれまで「日本からモスクは出ていけ」という住民反対運動は盛り上がってこなかったのか。

 これまで問題になっていないことが急にブームになったのは、埼玉県川口市のクルド人問題や「イスラム土葬問題」が注目を集めているので、そこに便乗したのではないか、という疑念はどうしても拭えない。

藤沢モスクの建設予定地藤沢モスクの建設予定地 提供=筆者

 SNSでは、藤沢モスクを建設する群馬県の宗教法人「ダル・ウッサラーム」が、イスラム系実践運動団体「タブリーギ・ジャマード」の流れを汲む組織であることから、「テロ組織」だと盛んに攻撃している人たちがいる。この団体がサウジアラビアなど一部の国で「規制」されていることなどを根拠としているのだ。

 ただ、これについては「ダル・ウッサラーム」側もホームページで反論しており、それらの国で規制されているのはタブリーギ・ジャマードだけではないこと、世界8000万人のオープンで穏健な運動ネットワークであり、日本をはじめアメリカ、EUなどでテロ組織や監視対象として扱われていないと訴えている。

 確かに、タブリーギ・ジャマードに関わるモスクは1991年に埼玉で開設され、東京、神奈川、愛知、群馬などにも存在してテロや凶悪事件の舞台になっていない。34年間、問題視されていなかったイスラム組織がなぜ急に「テロの温床」と目の敵にされたのか、というのも非常に興味深い現象だ。

 現地を取材すると、住民の中にも「特に不安はない」という冷静な人も少なくない。その理由として現地から車で30分ほどにある「海老名モスク」を挙げた。