神奈川県海老名市には2000年にできたモスクがある。こちらも宗教法人ダル・ウッサラームによるものだ。しかし、これができてから25年、ムスリムによる犯罪が増えたということはない、と海老名市は説明している。

 金曜日の礼拝などに近隣のムスリムが集まるため、騒音や路上駐車が多いなどの苦情はあるそうだが、今では交通整理スタッフを置くなどして対処しており、実際に海老名モスクに行ってみると、入り口にも「駐車禁止場所」が大きく告知され、改善に務めているようだ。

海老名モスク海老名モスク 提供=筆者

 また、25年も地域に根ざしているだけあって、社会・地域貢献活動にも力を入れている。東日本大震災の際には、このモスクを拠点に炊き出しや救援物資を送るなどの被災者支援活動が行われたことをブログで発信しているし、コロナ禍の際には、ワクチン接種会場として提供され、海老名市長から感謝状も送られている。

 そんな「海老名モスク」を訪ねてみると、祈祷室でスリランカ男性2人が祈りを捧げていた。終わってから今回の藤沢モスク騒動について質問をすると、「問題になってますね。でも私たちにはよくわからない」と言葉少なだった。

 日本人の中でも、善良な人とどうしようもない悪人がいるように、ムスリムの中にも犯罪に手を染める人がいるのも事実だ。特にいろんな国籍、文化をもつ人がいり混じっているので、そのレイヤーはさらに複雑となる。

 ただ、「ムスリム」というだけで「犯罪をする」「レイプをする」という批判はさすがに乱暴すぎる。アメリカで中国人排斥の動きが盛り上がった際、「顔が同じ」ということで日本人も暴行被害にあったが、それと同じくらい乱暴な差別だ。

 筆者は安倍政権時代から「外国人労働者の受け入れ拡大」を一貫として反対してきたので、「移民政策反対」を主張する人々も支持している。しかし、今回の「モスク建設反対」はモヤモヤしてどうにも賛同できない。厳しい言い方だが、ムスリムへの偏見と先入観を利用して、いくら叩いても刃向かってこないマイノリティを攻撃することで、「愛国者ブランディング」をしているように見えてしまうのである。

 藤沢駅前で繰り広げられた壮絶な罵り合いを見てもわかるように、激しい憎しみはさらなる激しい憎しみを生む。ムスリムに向けた憎悪がそのまま我々のもとにもブーメランでかえってくることがないよう、SNSの溜飲の下がるナショナリズム的な主張以外にも目を向けるべきではないか。