だが、その他の国では、一夫多妻や男性の専権的離婚権を認めるかたちで成立し、その後改定が進められているものの、一夫多妻と夫の専権的離婚権はなくなっていない。

 ところで、イスラームでは男女は本質的に異なる性質や能力をもち、それぞれの性に応じた権利と義務を与えられるとの前提に立っている。

 このため、一夫多妻を禁じたチュニジアでも、1993年に改正されるまで、扶養・服従義務――夫は妻と家族を養う義務があり、妻は夫に服従する義務がある――の条項が盛り込まれていた。

 サウジアラビアは2022年になってようやく家族法を制定したが、同家族法では一夫多妻は禁じられておらず、夫の扶養義務と妻の服従義務が明記された。さらに女性が受け取れる遺産相続は、男性の半分である。

 これらが短絡的にまとめられれば、「イスラームのために性差別がなくならない」と理解されるだろう。

夫と第2夫人との結婚に
心を傷つけられる第1夫人

 たしかに「イスラーム」のために問題が生じることはある。ただし、その問題は誰にとっての問題なのだろうか?

 筆者がフィールドとしているサウジアラビアで、中高年の女性たちからしばしば悩みを打ち明けられる、一夫多妻を例に考えてみたい。

 データは存在しないものの、サウジアラビアでは一夫多妻は決して少なくはないとの実感を私は得ている。なかでも中高年を迎えた男性が、2人目の女性と結婚する例が多い。夫が2人目の女性と結婚する場合、妻(第1夫人)は、たいてい夫の第2夫人との結婚に心を深く傷つけられる。

 かつて部族内での結婚が一般的だったサウジアラビアでは、男女ともに、若くして親が決めた部族内の相手と結婚することが多かった。子どもが成長したころ、急に夫が第2夫人と結婚する、というパターンが多い。

 女性にとっては、中年になり子どもを授かるのが難しくなるころ、あるいは体調不良を感じるころである。

 イスラームの聖典クルアーンには、「あなたがたがもし(女の)孤児に対し、公正にしてやれそうにもないならば、あなたがたがよいと思う2人、3人または4人の女を娶れ。だが平等にしてやれそうにもないならば、只1人だけ(娶るか)……(後略)」(4章3節)という一節がある。