妻が慢性病や不妊の場合なども一夫多妻をする理由となるが、解釈はさまざまで、妻は病気や不妊を理由に離婚されずに済む、と肯定的に考えられることもある。

夫が別の女性と結婚しない条件を
婚姻時の契約で付すこともできる

 ところで、はじめてサウジアラビア人の女性が脚本と監督をつとめ、2013年に日本でも公開された映画『少女は自転車にのって』は、女の子が乗るものではない、とされてきた自転車を、主人公ワジダが乗れるようになるストーリーである。

 女の子が自転車に乗ると妊娠できなくなるという迷信めいた伝統や慣習を、少女が明るく打ち破っていく、一見すると爽快感のある物語だ。

 だが、ワジダの母親は心穏やかではない。ワジダの父親である夫が、別の女性と結婚するのだ。ワジダの母親は、男の子を産むことができなかった。それが、夫が別の女性と結婚する原因だ。

 ただし、第2夫人を望んでいるのは、ワジダの父親だけではない。ワジダの父方の祖母(ワジダの母から見れば姑)も第2夫人を望み、相手を探している。

 イスラームでは婚姻時に契約を交わすのだが、その際、妻は夫が別の女性と結婚しないという条件を付すこともできる。

 だが、慣習上、皆がそうできるわけではない。女性からの離婚は容易ではないことや、女性が経済的に、そして市民として自立することが難しかった時代には、「夫が他の女性とも結婚することは、仕方のないこと」と割り切る女性も多かった。

 妻同士(僚妻)が近くに住んでいれば、いがみ合うよりも助け合い、家事や子育てを分担するほうが良い。子どもが成長すれば、自分の子のみならず、僚妻の子からも慕われる存在となる。好むと好まざるとにかかわらず、女性は直接的・間接的に家父長制に加担し、強化・再生産してきた側面がある。

 だが、部外者であるわれわれは、その責任をイスラームに転嫁することに慎重でなければならない。このような困難に直面した女性は、ではイスラームを責めるかというと、そうではない。