「10年後の自分をデザインせよ」――キャリアデザインは裏切られる

 今の多くの若者がキャリアデザインにとらわれるのは、学校で「将来を見据えてキャリアデザインをするように」と教育されているからである。就職が身近に迫っている大学生だけでなく、中学・高校時代からキャリアデザイン教育を受けていることもある。

 私は、そのようなキャリア教育のあり方に対して、もう15年も前から警鐘を鳴らしてきたのだが、未だに踏襲されている。

 たとえば、キャリアデザイン教育では、3年後、7年後、10年後、20年後、30年後など、時期を区切って自分の将来のキャリア像をデザインするように言われたりする。

 しかし私が大学生約200名を対象に行った調査では、「10年前どころか5年前でさえ今の自分を予想していなかった」という学生が61%であり、「予想していた」という学生の22%を大きく上回っていた。

 新しいキャリア理論であるキャリアのカオス理論も強調するように、キャリア形成にはさまざまな偶然の要因が影響するため、将来の自分のキャリア像などなかなか想像がつかないものである。授業の課題だからということで、学生が将来のキャリア像を思い描いたとしても、その通りになることなどほとんどない。キャリア形成にどんな偶然の要因が影響してくるかなど、誰にもわからないからだ。

 心理学者クランボルツが実施した調査でも、18歳のときに考えていた職業に就いている人は、わずか2%にすぎなかった。

 家業を継ぐような場合は別として、高卒で働いている者で、中学生の頃に「こんな職業に就きたい」と思った職に就いている人がどのくらいいるだろうか。大卒で働いている人で、中学生や高校生の頃に「こんな職業に就きたい」と思った職に就いている人がどのくらいいるだろうか。

 それどころか、就活をし始めたときには希望していなかったような職業に就いたというのも、決して珍しいことではない。むしろ、そういう人の方が多いのではないだろうか。