2024年は、兵庫県や近畿・西中国地域においてもミズナラが軒並み凶作だった。クマが出没する前の段階から、その年は危ういのではないかという予測が発表されており、その結果として通常は出現しない場所にクマが現れたり、通常は近付かない集落内のカキの木に近付いたりする事態が発生した。

 秋田県で起きているような庭先への出没が、当時も近畿地方でちらほら見られた。ただし、全国的なニュースにはならなかった。近畿地方では報道がなされ、出現した個体の駆除も実施された。駆除数は例年と比較して多かったが、これは大量出没を踏まえた行政側の対応である。ドングリが実らないことが事前にわかっていたため、出没が予想されるとの共通認識が行政と住民にあった。

 実際に出没が始まってからも、果樹の管理や夕暮れ時の外出を控えることをより徹底してほしいという呼びかけがなされた。通常、出現しない場所に現れた個体については、粛々と駆除を進めていく対応が取られた。

 規模の大小はあるものの、どの地域においても秋の山の実りが悪い状況になると、通常とは異なる数のクマが出没する現象が起きる。つまり、ドングリの凶作が大出没を引き起こすという基本的なメカニズムは、全国共通である。

 しかし、興味深いことに、その発生年は地域によって異なる。

なぜ特定の地域にだけ
クマが大量出没するのか

 秋のクマの大量出没の地域的なズレには、いくつかの要因が複合的に関わっている。

 第一に、樹種によって木同士で実りの程度を同調させる範囲が異なる。例えば、北関東ではミズナラだと約7km以内、コナラだと約4.5km以内の木同士は、似たような実りの程度になる一方で、東北地方のブナでは100kmを超える範囲内の木同士で実りの程度を同調させる(Suzuki et al. 2005, Masaki et al. 2020)。

 つまり、地域や樹種によっては、ある山では凶作だが、隣の山では豊作といった状況が起きる。凶作の広がりがクマが移動できる範囲内であれば、クマは食べ物が存在するところまで移動すれば済む。しかし、たまたまこの山も隣の山も、その隣の隣の山も凶作といった状況になると、クマの移動できる範囲を超えてしまうことになる。