もしかしたら、栗原さんが「敵チーム」を欺くためにフェイクをかけたために、チームメイトがそのフェイクに反応してしまって、ルール上は取りにいくべきボールを取りにいかなかったのかもしれません。
だとしたら、そのようなフェイクまでも織り込んだシミュレーション練習を、もっとやっておくべきだったのかもしれませんし、栗原さんがフェイクをかけるときには、それがわかるような声がけを瞬時にやっておくべきだったのかもしれません。
このように、「自分のミス」ではないときであっても、自分に矢印を向けることによって、自分自身のプレイの質を高めることもできるし、チームの機能も向上させることができるとおっしゃるのです。
本当に優れたアスリートは、「地味なプレイ」に徹する
それにとどまりません。
そのような意識をもったアスリートは、さらに成長していくといいます。
なぜなら、「自分に矢印を向ける」ことを意識しているアスリートは、自分がよいプレイをすることだけに終始するのではなく、「自分がどのようなプレイをすれば、チームメイトがよいパフォーマンスを発揮しやすいか」「自分がどういう振る舞いをすれば、チームの士気が高まるか」ということにまで考えが及ぶようになるからです。
たとえば、本当にうまい選手は、高度な予測力を駆使して、絶妙なポジショニングを行って、チームメイトに「スパイクしやすいボール」をトスしたりすることができます。その人自身は目立たない地味なプレイに終始しながらも、チームのためにチャンスメイクをするわけです。
あるいは、試合の流れを読みながら、「このポイントは絶対に落としてはいけない」という局面で、大きな声を出してチームに発破をかけたり、ミスした選手の肩をポンと叩いて「よいエネルギー」を伝えたり、あえてミスした選手にトスを上げることで、「あ、また私にチャンスをくれるんだ!」と自信を与えてあげたり……。
このように、目立たないながらも、「自分のため」ではなく、「チームメイトのため」「チームのため」に行動できる、縁の下の力持ちのような存在こそが、本当の意味で優れたアスリートだということです。
ビジネス現場で「尊敬される人」の共通点とは?
これは僕たちの職場でも全く同じことですね?
自分の“守備範囲”の仕事だけいくら完璧にこなしたとしても、職場で高い評価は得られません。
自分の仕事はきちんとこなしつつも、いかに同僚の助けとなるか、そして職場全体の成果につなげるような働きができるかを真摯に追求できる人だけが、本当の意味でプロフェッショナルとして認められるのです。
僕自身、TBSやプルデンシャル生命でさまざまな優秀な人物を見てきましたが、「この人は本当にすごいな」と周りから尊敬を集める人はどなたも、自分がもっている有益な情報や経験を惜しみなく仲間に共有して、周囲によい影響を与えていらっしゃいました。
だからこそ、その人はいつもエネルギッシュで運気もよく、よい情報が集まってくる。逆に、中途半端な人ほど出し惜しみをしている。いや、出し惜しみをするから中途半端になってしまうのです。
エネルギーも運気も情報も出せば出すほど増える――。
僕も惜しみなくそれらを出していける人間になりたいと思っています。
(この記事は、『超⭐︎アスリート思考』の一部を抜粋・編集したものです)
金沢景敏(かなざわ・あきとし)
AthReebo株式会社代表取締役、元プルデンシャル生命保険株式会社トップ営業マン
1979年大阪府出身。京都大学でアメリカンフットボール部で活躍し、卒業後はTBSに入社。世界陸上やオリンピック中継、格闘技中継などのディレクターを経験した後、編成としてスポーツを担当。しかし、テレビ局の看板で「自分がエラくなった」と勘違いしている自分自身に疑問を感じ、2012年に退職。完全歩合制の世界で自分を試すべく、プルデンシャル生命に転職した。
プルデンシャル生命保険に転職後、1年目にして個人保険部門で日本一。また3年目には、卓越した生命保険・金融プロフェッショナル組織MDRTの6倍基準である「Top of the Table(TOT)」に到達。最終的には、TOT基準の4倍の成績をあげ、個人の営業マンとして伝説的な数字をつくった。2020年10月、AthReebo(アスリーボ)株式会社を起業。レジェンドアスリートと共に未来のアスリートを応援する社会貢献プロジェクト AthTAG(アスタッグ)を稼働。世界を目指すアスリートに活動応援費を届けるAthTAG GENKIDAMA AWARDも主催。2024年度は活動応援費総額1000万円を世界に挑むアスリートに届けている。著書に、『超★営業思考』『影響力の魔法』(ともにダイヤモンド社)がある。
【著者からのメッセージ】
はじめまして、金沢景敏です。
京大アメフト部出身の僕はかつて、TBSの社員としてスポーツ番組の制作を担当させていただき、すごく充実した日々を送っていました。
しかし、「テレビ局の看板」のおかげでチヤホヤされて“いい気”になっている自分に疑問をもち、フルコミッションの営業マンとして実力を試してみたいとプルデンシャル生命に転職。「日本一の営業会社で日本一になる」ことを目標にしたのです。
もちろん、そんなに甘い世界ではありません。最初はさんざんな目にあいました。というか、僕が、「売ろう、売ろう」とするがあまり、お客様を無理やり説き伏せるようなことをしていたせいで、お客様からの信頼を得ることができなかったのです。
そして、気が付いたら、「このまま行ったら、営業マンとして終わる……」というところまで追い詰められてしまいました。当時は、吐くほどの危機感に苛まれたものです。
このとき、苦境に陥った僕を鼓舞してくれた存在があります。
TBS時代に接してきた数多くのトップアスリートたちです。
僕は、彼らと接するなかで、彼ら特有の「思考法(マインドセット)」、あるいは「思考のクセ」があるということに気付きました。
もちろん、トップアスリートはみなさん個性的ですから、その個性に応じて「思考法」もさまざまです。それでも、枝葉の部分を切り落として、幹の部分を取り出せば、ほとんどのトップアスリートに共通する、王道と言っていいような「思考法」(それを、僕は「アスリート思考」と名づけました)が存在すると思うのです。
⚫︎「自分の弱さ」を認めることから始める
⚫︎「やるか、やらないか」の二択を自分に迫る
⚫︎「前向きな内省」を突き詰める
⚫︎「コントロールできないこと」は考えない
⚫︎嫌なことがあったら「感謝」する
⚫︎「やる気」を頼りにせず、やらざるを得なくなる「仕組み」をつくる
⚫︎「これが限界」という一線を少し超える負荷を自分にかける
⚫︎やるべきことを徹底的にやれば、「結果」は自然とついてくると考える
そこで僕は、こうした「アスリート思考」を徹底的に実践することで、営業マンとして巻き返しを図ることにしました。もちろん、すぐに結果につながるわけではありません。しかし、愚直に「アスリート思考」を実行し続けることで、徐々に状況は変化。好循環が始まると、それはどんどん加速していき、気がついたら、転職一年目にしてプルデンシャルで「日本一」になることができたのです。
その後も、「アスリート思考」を追求し続け、入社3年目には、卓越した生命保険営業のエキスパートに与えられる称号「TOT(Top of the Table)」を獲得。最終的には、TOT基準の4倍を超える成績を上げることができ、プルデンシャル生命史上最高の営業成績(当時)を打ち立てることもできました。そして、在籍8年でプルデンシャル生命を退職。2020年に、AthReebo(アスリーボ)という会社を設立して、現在に至ります。
AthReeboという社名は、Athlete(アスリート)とReborn(リボーン、再生)を掛け合わせたもので、文字通り「アスリートを再生する」という願いをこめています。
引退したアスリートに、働きながら社会やビジネスのことを学ぶことができる機会や場所を提供することを目的に、アスリーボという会社を設立。将来的には、我が社が、アスリートとして培ってきた能力・スキルを活かしながら、社会で活躍する「インフラ」となることで、「アスリートのセカンドキャリア」という言葉をなくしていきたいと考えています。
『超☆アスリート思考』は、アスリーボの事業目的にご賛同いただいている、野村忠宏さん(柔道)、伊達公子さん(テニス)、古田敦也さん(野球)、潮田玲子さん(バドミントン)のほか、川合俊一さん(バレーボール)、井上康生さん(柔道)、栗原恵さん(バレーボール)、福永祐一さん(元騎手・調教師)、松坂大輔さん(野球)など錚々たるアスリートにもご協力をいただいて、「アスリート思考とは何か?」について徹底的に深掘りしてまとめ上げたものです。
「アスリート思考」は誰にでも実践可能なものであり、愚直に実行すれば必ず「結果」に結びつく強力なスキルです。大切なのは、本書の内容を「知識」としてストックすることではなく、コツコツと実践し続けることです。誰にでもできる小さなことを、誰にも真似できないレベルで徹底的にやり続けることこそが、その神髄なのです。
そして、そのプロセスを誤魔化すことなく一歩ずつ歩み続けることで、自分への信頼感、自分への肯定感が養われることによって、日々の充実感や、人生の豊かさをも実感できるようになります。ぜひ、僕たちと一緒に「アスリート思考」を実践して、その感覚を実感していただければと心より願っています。