イラン産原油を安く輸入、中国の特殊な関係
イランの海外販売の80%は中国向け

 中国政府が、これまで全く何もしなかったというわけではない。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、4月7日、米国とイランが2週間の停戦に合意する過程では、中国はイランに対し、トランプ大統領が警告した通りにイランのエネルギー施設や主要インフラを攻撃されれば、経済的打撃が大きいとして、イランを停戦で強く説得したという(注2)。

 他方、イランから見ても中国は特殊な存在だ。

 イランは原油の大部分を中国に輸出している。2025年にイランが海外に販売した原油の80%は中国に向かった。

 中国は、これまで「シャドーフリート(影の船団)」などを活用して、イラン産石油を相場より安い価格で輸入し、国内物価の維持に活用してきた(注3)。中国が買い入れたイラン産原油は、輸入量全体の約13%に達する。

「奇策」とみられた逆封鎖は
イラン、中国に大きな打撃に

 こう見てくると、トランプ大統領によるホルムズ海峡「逆封鎖」は、イランから中国への原油輸出を止めることが主たる目的ではないかと考えられる。そしてこれは、中国にとってもイランにとっても、極めて大きな痛手となるものだ。

 イランがホルムズ海峡を封鎖して以来、通過した船の大部分は中国船籍であることを考えれば、逆封鎖はとりわけ中国経済に莫大(ばくだい)な打撃を与えるだろう。

 これはイランにとって微妙な問題だ。イランは中国との経済関係を重視している。しかし、海峡封鎖は中国の利益と衝突する。つまり、イランは最大の経済パートナーの支持を失うリスクを抱えたことになる。

「逆封鎖」は、当初、「奇策」と受け止められることが多かったのだが、実は中国、イランの双方にとって、極めて大きな打撃だったのだ。

 中国は、4月12日に、トランプ大統領が「ホルムズ海峡を封鎖する」と逆封鎖を主張した時には「各方面が冷静さと自制を保つべきだ」と述べるにとどめた。

 翌13日、中国外務省は「関係諸国は冷静さと自制を保つべきだ」との見解を示した。この声明でもアメリカの行動を名指しで批判することは避け、中東の安定と海路の安全性確保の重要性を強調するにとどまった。

 郭嘉昆副報道局長は、記者会見で「各当事者は冷静さと自制を保つべきだ」と語った。

 郭氏はホルムズ海峡について「国際貨物とエネルギー貿易の重要な通路だ」と強調した。そして、米国・イスラエルとイランに改めて早期停戦を求めた。

 さらに、トランプ氏が12日、イランに兵器を供給する国からの全ての輸入品に50%の関税を課すと警告したことについては、「関税戦争に勝者はいない」と語っている。