巨額の債務を抱える日米にとって
死活的な問題になる

 実質的な豊かさが成長していないにもかかわらず、我々の社会システムは今日まで維持されてきた。それは、未来のテクノロジーがもたらすはずの「多大な経済成長」を担保にして、現在を生き延びるための莫大な借金を続けているからだ。

 進歩の速度を計算することは、日々の政策決定において極めて重要です。

 例えば、最新のiPhoneの画面がスムーズになったことで得られる満足感(快楽的利得)は、私たちが考えているよりもインフレ率が低いことを意味し、その結果として社会福祉の給付額を削減できるということになるのでしょうか?

 これこそが、政府が毎年ひっそりと行っている種類の決定なのです。

 さらに大きな規模で見れば、それは死活的な問題となります。なぜなら、私たちの社会は、日本もアメリカも同様に、「将来的に多大な成長がある」という前提のもとに組織されているからです。

 あるいは、マクロ経済についても同じことが言えます。日本の債務はGDPの200%を超えています。アメリカもまた、ある意味では日本よりも深刻な、巨額の債務問題を抱えています。

先進諸国の若者たちが抱く
「親の世代より豊かでない」という感覚

 実体経済の成長がないまま借金だけを膨らませるシステムは限界点に達し、若者たちから未来への希望をも奪い去っている。

 アメリカや日本、その他の先進諸国の若者たちと話をすると、彼らは皆、親の世代と同じようにやっていくことさえ非常に難しいと考えています。

 進歩が世代間で現れるような形、つまり、ある世代が次の世代よりも豊かになるという形において、アメリカで初めて若者が(※1946年から64年の間に生まれた)ベビーブーマー世代の親よりも豊かでなくなっている今、物事が行き詰まっている、あるいは逆行さえしているという実感が、実に明白に抱かれているのです。

 ついでに言えば、私たちの両国(日本とアメリカ)における出生率の低さは、人々が「物事はもはや進歩していない」「自分たちの子どもは自分たちよりも貧しい生活を送ることになるだろう」と信じていることによって、部分的に説明がつくと私は考えています。

 それではAI革命はそれ自体で経済の停滞を終わらせるほど大きいものなのだろうか。