これまで企画したヒマラヤトレッキングは、子どもの参加を想定したものではなかったのですが、「子どもと一緒に参加していいですか?」「子どもを1人で参加させてもいいですか?」など、問い合わせが来るようになりました。最初は受け入れるべきか迷いましたが、この経験が子どもの人生に大きな影響を与えるかもしれない、その可能性を私が閉ざすわけにはいかない。そう考え、参加を受け入れることにしました。

 面倒見のいいシェルパたちや、私より人生経験の豊かな参加者さんたちもいるので、大丈夫だろうと心配はありませんでした。

 ただ、1人で参加する子どもがいるときは、シェルパの数を増やし、子ども担当のシェルパを作って、「常に気にかけておいてね」と伝えていました。子ども本人にはそのことは伝えませんが。

 ある年、1人で参加した子どもが旅の途中で「今まで生きてきた中で一番充実している」と話してくれたんです。

書影『エベレストは居酒屋です』(渡邊直子、講談社)『エベレストは居酒屋です』(渡邊直子、講談社)

 トレッキングでは、シェルパの普段の登るスピードに食らいついていったり、トランシーバーでシェルパとやり取りをしたり、テントで一緒に寝たり、ホームステイをしたり、みんなの前で歌を歌って、みんなから歓声を浴びたり、シェルパがおんぶして走りながら下りてくれたり、道なき道の急斜面を4500mまで登るサバイバル体験をしたり――。忘れられない経験になったのだと思います。

 自分を受け入れてくれる世界を知ったことで、心が解放され、「自分の居場所」を見つけたような印象を持ちました。

 今まで私のヒマラヤトレッキング企画に参加した最年少は9歳。ヒマラヤは大人だけの特別な舞台じゃない。年齢も経験も関係なく、誰もが楽しめる場所です。