現在でも、勤務している宮城県内で少なくとも年間300人以上が入浴中に亡くなっていると報告されています。
ヒートショックで亡くなった方の特徴的な所見としては、海や川で溺れるケースとは異なり、気道内の泡沫が非常に少ないことです。海や川で溺れるときのように抗わないので、空気を吸い込んでおらず、入浴中に眠るようにして浴槽に沈んだことがわかります。
苦しければもがいて空気を吸い込み、ご遺体の鼻や口からたくさんの泡沫が漏れ出るはずなので、おそらく亡くなった本人は苦しくはなかったのではないでしょうか。
ヒートショックで亡くなるのは65歳以上の方が多いことなどから、入浴中に「一過性脳虚血」の状態に陥っても、自律神経の反射が遅く、その状態のまま浴槽に沈んで、最悪の場合、溺死してしまうと考えられています。
若い人の場合は、一過性脳虚血の状態に陥っても、浴槽内に沈み込みそうになったらハッと目が覚めます。これは自律神経が敏感に反応することによって血管を収縮させて心臓を速く動かし、脳への血流を回復させようとするからです。
10分前まで風呂から
声が聞こえていたのに…
では、どうすればヒートショックを防げるのでしょうか。家族が声かけをする、設定温度を41度以下にする、長風呂をしないなど、さまざまな注意点が挙げられているようですが、私はどれも完璧な対策とは言えないと考えています。
5分おきに声かけをしても、次に見に行ったら亡くなっている、というのがヒートショックです。安心はできません。
その証拠に、私が過去に解剖したケースを紹介しましょう。ご家族によると、いつもは10分程度でお風呂から上がってくるのに、その日は20分経っても一向に上がってこなかったそうです。それで心配になって声をかけたら、「まだ入ってるよ」と返事があった。
しかし、それから10分経っても上がってこないので見に行ったら浴槽に沈み、すでに亡くなっていたということでした。







