これは私の想像でしかありませんが、ひょっとしたら、本人は半分気絶しているせいで風呂に十分な時間入っているという感覚がないのではないでしょうか。だから、家族が声をかけても「もうちょっと長く浸からせてよ」というつもりで「まだ入ってるよ」と言ったのかもしれません。

 このように「何分の入浴なら安全」ということは言えないのがヒートショックの恐ろしいところです。そのため、たとえ本人が嫌がったとしても、十分な時間浸かっているのなら、家族が声かけした時点でお風呂からは上がらせたほうがよいでしょう。

熱い湯に平気で入っていた
高齢者が大浴場で浮かんでいた

 65歳を超えると、温度に対する感覚が鈍くなっているのもヒートショックが高齢者に起こりやすい原因の1つかもしれません。よくマンガなどであるでしょう?銭湯で45度くらいの熱い風呂におじいちゃんが入っていて、若者が「あちっ!」と言ったら「まだまだ根性が足りねぇな」と返すヤツです。

 あれは若者に根性がないのではなく、おじいちゃんの温度に対する感覚が鈍くなっている可能性大です。本人に熱いという自覚がなくても、過度に熱いお湯は血管を余計に拡張させるので、気絶が起こりやすくなります。年を取ると、昔は平気だった環境因子も危険なものになります。

 お風呂で突然死しないためには、自分が日々年老いているという自覚も必要です。

 注意点はほかにもあります。リビングと脱衣所、脱衣所と浴室の温度差をできるだけなくしましょう。

 また、食事をした直後には絶対に入浴しないようにしてください。食事と入浴によって副交感神経が優位になって、気絶状態に陥りやすくなります。個人差もありますが、胃の中が空になるまでにはだいたい4~6時間はかかるため、できるだけ「食事前の空腹状態で」入ることをおすすめします。

 もちろん、飲酒後にお風呂に入るのは絶対にやめてください。「酔い覚ましにひとっ風呂浴びるか!」と言う人がいますが、逆です。風呂上がりに1杯やってください。

 温泉旅館の大浴場で浮いているのが発見され、法医学者のところに運ばれてくる人が毎年のようにいます。「飲むなら入浴の後」を鉄則にしましょう。