日立は自己変革を極限まで推し進め、過去にとどまらない姿勢がよく分かる。今回の家電譲渡も、外部から強制的に迫られたというよりも自ら組み替えた印象が強い。日本的経営が変化した象徴として語られるだろう(とはいえ20年近くかかったが)。

 もちろんノジマにも注目したい。これまで買収してきた事業は、ノジマの圧倒的な販売力と、オペレーションノウハウで再生している例が多い。もはやノジマは家電量販店ではなく、事業の再生請負人といっても過言ではない。ノジマは店舗にメーカー派遣販売員を置かないことで知られる。つまり、家電メーカーとの馴れ合いを排除してきた。店員が中立的な立場で商品購入のアドバイスをしてくれることが、買い物客から支持されている。

期待の日本企業同士だけど…
死角はないのか?懸念点とは

 ノジマは今回のM&Aで、販売データを製品開発へ還流することを狙っているという。さらにメリットは、新興国向けの販売網を手に入れることだ。規模を生かして部品調達も集約できるだろう。国内ではノジマの携帯キャリアショップ経由で、家電の販売や保守の請負を始める、なんて可能性もある。

 家電新会社のメリットは何より、評判のいい販路を確保したこと。そして、新たな経営体制で開発や投資のスピードアップが期待できる。

 一方で、懸念点もある。日立の家電は、日立というブランドゆえに全国津々浦々の家電店で販売できていた。ノジマ以外にも、家電を売る店はたくさんある。というか割合としてはノジマ以外の方が圧倒的に多い。

 独禁法の観点から、他の量販店が「日立の家電はノジマの傘下になったから販売を拒否する」なんて事態にはならないだろうが、積極的に売るかどうかは不明だ。前面には押し出さない可能性はある。もちろんノジマ店内でも日立をあまりに特別扱いすれば、他のメーカーや買い物客から非難の対象になるだろう。

 筆者が最も興味深いのは、日立とノジマという日本企業同士がタッグを組むことで製販一体の垂直統合が成功するか否かだ。日立ブランドの冷蔵庫や洗濯機は、グローバル市場で猛烈な競争にさらされている。中国や韓国勢に勝てる余地はあるのだろうか。