加:違います。エボはAYCデフという機械式で、エンジンの駆動トルクを左右に積極的に振り分けることができるようになっています。駆動力を使って左右差をつくるので、ブレーキでつまむ必要がありません。結果としてコーナーで減速感が生まれない。ブレーキを使うデリカは、ほんの少しですが減速感が出てしまう。なのでGボールで表すと、そこの領域だけ少し控えめに設定しています。

F:なぜエボのようなAYCデフをデリカに入れないんですか。

加:値段が……結構なコストがかかるんですよ(苦笑)。

 それに、デリカでサーキットをエボのように走る性能が必要なのかと。デリカのキャラクターとして、そこではない。そこにコストをかけるよりも、デリカが本当に輝く場面での性能に全力を注ぐべきだと考えています。

常時4駆を維持する三菱の哲学

F:なるほど。それはそうですよね。4輪の前後配分はどのくらいの幅で動くのですか。

加:モードにもよりますが、おおよそ「82:18」から「55:45」ぐらいの間で動いています。ただ、ある断面を切り取ると数字を言えるんですが、これが目まぐるしく変化し続けているので、「前後でこの配分」と一言では言えないのです。S-AWCのモニター表示がありますが、あれは5段階表示で、実際の制御はその表示が追いつかないぐらい細かく動いています。

F:高速道路を一定速度で真っすぐ走っているときも配分は変わるのですか?

加:変わります。アクセルを踏んだり戻したりすると動きます。

F:他社は4駆でも高速域で燃費を維持するために「2駆の状態」に切り替えるところもあると聞きますが。

加:そういう話も聞きますね。ですが路面は待ってくれません。急に風が吹いてきたり、路面状況が変わったりもする。我々三菱自動車としては、4駆を維持することが安定性を高めるひとつの機能だと考えています。だからデリカは常に4輪にトルクをかけています。

F:たとえ燃費を犠牲にしてまでも、安定性のために4駆状態を維持していると。4駆維持のための燃費の差というのはどのくらいですか。

加:定性的に言えば損していますが、量で言えばシミュレーションにもよりますが、“0.何km”とか、そのくらいの差です。

F:そんなものですか。それだけのために他社は2駆にしちゃうんだ。

加:それだけみなさん、燃費に気を使っているということだと思います。

F:今回からドライブモードの名前が変わりましたね。以前は2WD、4WD、4WDロックでしたが※。

加:はい。今回、ノーマル、スノー、グラベルの3つに変えました※。「4WDロック」という名前が誤解を生んでいたんです。「ロック」という言葉から、高速では使えないとか、悪路専用というイメージを持つお客様が多くて。実際には電子制御カップリングなので、ずっと使ってもらっていい。今回、よりわかりやすい名前にしたかったという意図があります。

※編注:前モデル、新モデル共に、この3種に加えて「エコモード」があり、4つのドライブモードから選べるようになっている。