桑野信義/1957年東京都生まれ。トランペット奏者、歌手、タレント。「シャネルズ」(のちのラッツ&スター)のメンバーとして『ランナウェイ』『め組のひと』など数々のヒット曲で知られる。テレビ番組『志村けんのバカ殿様』『志村けんのだいじょうぶだぁ』などでコメディアンとしても活躍。2022年、大腸がんの闘病と復帰を綴った著書『がんばろうとしない生き方』(KADOKAWA)を刊行した 画像:本人提供
――家老役としての初出演は、うまくいきましたか?
東さんの演じ方を、何度もビデオを観て研究したから、もう動き方からしゃべり方までソックリになっちゃった(笑)。でも、志村さんにとって東さんは大先輩だけど、僕は後輩だから、そういう違いもあって徐々に違った雰囲気の、別の個性の家老になっていったと思います。
叱るよりも「ルール」を明確化
厳しいけれど、萎縮はさせない
――特番だと志村さんの指導が厳しくなる場面もありましたか?
意外とそういうのは無いんですよ。『だいじょうぶだぁ』の時も同じで、なにかミスがあっても、志村さんがその場で叱るっていうことはなかったですね。
唯一、ルールとしてあったのは「ミスがあっても途中で止めない」っていうこと。それと、「余計な笑いを途中で入れない」っていうことでした。
志村さんの笑いって、シリアスなドラマがずっと続いて、最後にドーンとオチが来るっていう構成なんです。だから、途中で勝手な笑いを入れると「フリ」の部分が弱くなる。そういう時だけ「それは、いらないんだよ」って指摘がありました。
――志村さんのコントは若手の登竜門のような一面もあったとのことで、爪痕を残したい出演者が、途中で勝手な笑いを入れてしまいそうですね……。
いや、共演者もスタッフも、そういうのには笑わない。それで空回りしているうちに、出番が無くなっちゃう、と……。もちろん、途中で志村さんを中心にサポートはしていくけど、ルールが守れない人は、チームでつくる笑いができないっていうことだからね。
志村さんは、頭ごなしに怒鳴って人を動かすというより、「この笑いはこういう形なんだよ」っていうのを、現場で少しずつわからせていくタイプだったと思います。ミスをしても、その場で恥をかかせるんじゃなくて、まずはコントとして成立させる。その上で、「そこは違う」「そこはいらない」と、外してはいけない線だけはきちんと示すんです。
だから、ただ優しいんじゃないんですよ。厳しいんだけど、萎縮はさせない。志村さんの現場って、そういう人の育て方だったと思います。







