値上げを消費者が受け入れる…?
投資家の楽観はいつまで続くのか

 日本株を買いに回った投資家は、企業の値上げを消費者が受け入れ、収益は伸びると楽観しているようだ。米国株などと比較した「割安感」に着目する投資家もいる。AI関連分野の成長がさらに加速するとみる投資家もいる。しかし今一度落ち着いて冷静に考えると、トランプ政策とイラン情勢の影響は避けて通れない。

 確かに近年のわが国では、産業全体で値上げが進んだ。物価上昇を消費者も認識し、結果的に企業の増収増益基調が維持された。個人消費は、大きくは腰折れしていない。高市政権の経済対策なども一時的であるにせよ、景気にプラスに働いている。

 半導体や省人化投資を中心に、設備投資は緩やかに持ち直している。名目賃金は、緩やかに上昇している。こうした状況が今後も続き、業績は拡大すると楽観する投資家は多い。

 しかし、米国とイスラエルによるイラン攻撃をきっかけに、わが国経済と企業を取り巻く環境は一変している。まず石油、そして国内の発電源として最重要である液化天然ガス(LNG)、さらにプラスチック原材料であるナフサの価格が上昇した。さらに深刻なのは、企業の事業継続に必要な資材の絶対量が不足し始めていることだ。

 業種別に見ると、エネルギー価格の上昇で、自動車関連分野の収益は下押しされる恐れが高い。トヨタ自動車は、11月ごろまでに海外生産を3万8000台ほど減らすとみられている。ホンダや日産自動車は、そもそも電気自動車(EV)シフトのつまづきや収益力の低下で業績が厳しい。また、住宅分野でも資材不足により工事の遅れが懸念されている。

 エネルギー資源価格の上昇は、物流業界にも深刻な打撃を与えている。物流におけるコスト増加は、あらゆる分野で追加の値上げ要因になるだろう。連鎖反応のように、産業界全体でコスト増加による値上げ、資材不足による供給制約が深刻化しつつある。近年伸びていた外国人観光(インバウンド)需要についても、航空運賃が値上がりしたことなどが影響し始めているようだ。

 しかも、トランプ米大統領が次に何をするか、予測するのは難しい。イラン攻撃発生後から4月中旬までの経緯を確認する限り、事態はさほど変わらなかった。

 企業がトランプリスクに対応するためには、余分な在庫確保の必要性が高まるだろう。戦争による資源価格の変動性拡大に対応するため、コストをかけて調達価格リスクの抑制(ヘッジ)を行うケースも増える。いずれも、原材料や販売管理費の増加要因になり得る。