黒田東彦の世界と経済の読み解き方米国とイスラエルの軍から攻撃を受けたイランの首都テヘランにあるシャリフ工科大学。IMFの最新の世界経済見通しは、戦争がもたらす深刻かつ長期的な経済的被害に焦点を当てている Photo:Majid Saeedi/gettyimages

国際通貨基金(IMF)が公表した最新の世界経済見通しは、戦争が経済に及ぼす悪影響に警鐘を鳴らしている。前日本銀行総裁の黒田東彦氏が執筆するダイヤモンド・オンラインの連載『黒田東彦の世界と経済の読み解き方』の今回のテーマは、「戦後の日本経済」。戦後を六つの時代で分けることで見えてきた、今後の日本経済の行方は?

中東戦争の試練に直面する世界経済
26年の成長率は3.1%へと下方修正

 国際通貨基金(IMF)が4月14日、「世界経済見通し」の2026年4月版を公表した。

「戦争の影が差す世界経済」と題した今回の報告書では、世界経済が「中東における戦争の勃発という大きな試練に直面している」と指摘し、26年の世界経済の成長率について1月版の予測であった3.3%から3.1%へと引き下げた。

 また、「近年、紛争の数が第2次世界大戦終結以来の水準にまで急増している」と警鐘を鳴らした上で、戦争がもたらす深刻かつ長期的な経済的被害について重点的に分析している。

 25年は1945年の終戦から80年目の年であった。戦後の日本経済を振り返ると、六つの明確な時代区分ができることが分かる。それを踏まえ、今後を占ってみたい。

戦後混乱期(1945~54年)
超インフレとデフレ経験も高度成長の基礎つくる

 第2次世界大戦後、生産能力が落ちた日本経済は、戦中の物価統制令などがなくなったところに600万人を超える軍人・民間人の帰国もあって、45~49年には物価水準が約100倍になるハイパーインフレに見舞われた。

 そこで49年、米国占領軍は米国の銀行家ジョゼフ・ドッジを派遣して、財政金融緊縮の「ドッジ・ライン」を勧告。これによって日本のインフレは収まり、デフレに陥った。

 その後、50年に始まった朝鮮戦争による朝鮮特需で景気が回復。この45~54年の戦後混乱期全体で、日本は年平均9%程度の成長をして復興を果たし、その後の高度成長の基礎をつくったのである。

高度成長期(1955~70年)
輸出増で投資と消費が加速、世界第2の経済大国に

 49年のドッジ・ラインで決まった1ドル=360円の固定相場が続く下、日本経済は輸出増に支えられて投資と消費を加速させ、外需と内需が順調に増加していった。55~70年の平均成長率は10%に達し、高度成長期に突入した。なお、この間の消費者物価上昇率は平均4.5%程度であった。

 68年には日本は西ドイツを抜いて世界第2の経済大国となり、日本経済の戦後の黄金期だったといえよう。