中国社会における日本文化の受容を示す象徴的な事例として、2026年3月には、メディア報道によれば、北京の回転寿司チェーン・スシローで、週末の夕食時間帯に整理番号が2000番台に達し、待合スペースが満席となる状況が常態化しているという。整理券の転売すら行われるほどの人気であり、平日でも追加料金を支払って順番を確保する客が存在するとされる。

 運営元であるFOOD & LIFE COMPANIESの決算によれば、2025年第4四半期の海外事業の売上高は428.7億円に達し、前年同期比で54.4%増となった。この大幅な成長は、中国市場の拡大による寄与が極めて大きいとされている。

 また、2026年4月に上海で開催された「日中友好成人式」では、中国政府や大学による参加抑制があったにもかかわらず、参加者は前年の約70人から100人へと増加した。中国人学生が振り袖を着用するなど、日本文化への関心はむしろ可視化されている。

 つまり、中国社会には、日本文化への心理的な親近感と、それに支えられた実際の消費需要が同時に存在している。政府が政策的に日本イメージを抑制しても、それを完全に消し去ることはできていない。

 むしろ、こうした需要の存在こそが、中国政府にとって別の制約となっている可能性がある。日本文化が広く受容される状況では、対日圧力の正当性を国内で維持しにくくなるためである。

対日強硬策を徹底できない
「二つの制約」

 では、なぜ中国は対日強硬策を徹底できないのか。その理由は大きく二つある。

① 第一の限界:経済成長と民族主義の両立

 中国では外交を「一局の大きな碁」として捉える傾向がある。対日関係もその一部に過ぎない。日本への圧力は、同時に欧米諸国へのシグナルでもある。

 しかし民族主義を過度に動員すれば、外資の流入や経済活動に悪影響を及ぼす。

 2010年代初頭には約10%の高成長を維持していた中国経済も、2026年以降は4.5~5%程度の中成長にとどまる見込みだ。

 さらに、イラン危機を背景に、4月13日から米国がホルムズ海峡の逆封鎖を行っている。中国は原油だけでなく、天然ガスの輸入量においても世界最大級であり、石油輸入量の半分、LNG輸入量の約3分の1はホルムズ海峡を経由している。