2026年4月6日、米ワシントンのホワイトハウスで開催されたイースター(復活祭)を祝う恒例行事「イースター・エッグロール」において、報道陣に対して発言するドナルド・トランプ米大統領 Photo:NurPhoto via AFP
最前線で働くビジネスパーソンが押さえておきたい、時代の変化とその背景を理解する上で欠かせない注目書籍を作家で元外交官の佐藤優さんが厳選する。日本人に足りないレトリック(修辞学)の技法とは?イラン人、イスラエル人にとっては常識だが、米国人が理解できない「もう一つの時間」とは?禁欲的なレーニンが巨大収容所のような共産主義国家をつくり、米国がロシア・ウクライナ戦争とイラン危機を生み出してしまった「根本原因」とは?『基礎から学ぶ修辞学』『保守のコスモロジー』『倫理的野心を持て』の3冊から「ここだけは読んでほしい重要な箇所」を抜粋して紹介する。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優)
日本人に足りない
レトリック(修辞学)の技法
ライアン・N・S・トッピング著『基礎から学ぶ修辞学』は、特段の訓練を受けていない人でも容易に修辞学(レトリック)を体得できる実践書だ。トッピング氏は、現代は修辞学に欠けた時代であると指摘する。
ライアン・N・S・トッピング著(大久保ゆう訳)『基礎から学ぶ修辞学 心を動かす〈説得〉の技法』フィルムアート社、2026年1月刊行
〈現代の人々と修辞学との関係性はどうにも妙である。もはや若者には教えられておらず、知識人にもその素養を求めたりしない。古代ギリシアのアテネでは自由市民に必須の技能だと考えられていた修辞術も、今やもっぱら口八丁として広告・宣伝業の専売特許みたいなもので、中古車ディーラー業界の足代ともなっている。何より悲劇なのが、この術があえて捨てられたことだ。ソ連がスプートニクを宇宙に打ち上げたのと同じころ、進歩なる美名のもと、アメリカ・英国・カナダの教育者連中は古くからある文法・文体の教本を、歴史という銀河間のゴミ捨て場にうっちゃってしまった〉(190ページ)
実は、旧ソ連では1957年に人工衛星スプートニクを打ち上げた後も修辞学が学校教育で重視されていた。評者は、ボリス・エリツィン元ロシア大統領の側近だったゲンナジー・ブルブリス氏(国務長官、第1副首相などを歴任)から修辞学の重要性を教えられた。
「マサル、日本人はもっとレトリックを勉強しなくてはいけない。『おまえ、うそをつくな』と言えばけんかになる。しかし、『お互いに正直にやろう』と言えば、相手もすんなり受け入れる。こちらから伝えたい内容は同じだ。レトリックを工夫するのだ」
政治においてもビジネスにおいても修辞学はとても重要だ。
トランプ氏の感覚では
「悪を倒す聖戦」に従事している
富岡幸一郎氏(文芸批評家、関東学院大学教授)は、評者と同じ日本基督教団に所属するプロテスタントのキリスト教徒だ。そのこともあり、評者と富岡氏の間では、言語化されない領域でも相互に理解できる事柄が多々ある。この言語化されない領域を言語化する努力を富岡氏は怠らない。
富岡幸一郎著『保守のコスモロジー』講談社、2026年3月刊行
富岡氏著『保守のコスモロジー』において、富岡氏はユダヤ教のシャバット(安息日)を手掛かりに、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教などの一神教に通じる宇宙観を伝えようとする。
金曜日の日没から土曜日の日没までは、ユダヤ教のシャバットで、ユダヤ教徒は働くことが禁止される。ホテルの従業員は、全て非ユダヤ人(ほとんどがキリスト教徒のアラブ人)に代わる。
シャバットの期間中は、火に触れることができない。ユダヤ教では電気も火とされているので、エレベーターは全て各階停止に切り替わる。カフェやレストランで温かい飲み物や食べ物を取ることができなくなる。富岡氏はイスラエルでの体験についてこう記す。







