Photo by Takayuki Miyai
スーパーゼネコン5社の中で、積極的な企業買収(M&A)を繰り返してきた大成建設。2025年には東洋建設を約1600億円で買収するなど、業界再編の仕掛け人としての存在感が高まっている。人手不足や建築費の高騰で不透明感が増す建設業界において、相川善郎社長はいかなる生き残り戦略を描いているのか。連載『騒乱!ゼネコン・不動産』の本稿では、相川社長に今後のM&Aの方針と展望について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
営業利益率10%達成は私の目標
サブコンの支援が業界全体の課題
――2026年3月期の中間決算では営業利益が前期比2倍となりました。第3四半期も過去最高益を記録しました。こうした足元の好業績をどう分析していますか。
土木は常に安定した高い利益率を維持しており、売上総利益率は20%前後で推移しています。建築については23年あたりが利益率の面では底でしたが、26年3月期は改善する見込みです。ただ、まだ途上だと考えています。物価上昇に伴う価格転嫁が進み、採算の厳しい案件も少なくなってきました。27年3月期以降は、建築の売上総利益率の向上を目指します。
目標としては、次期中期経営計画の期間中に、連結営業利益率10%を目指したいと考えています(25年3月期は5.58%)。土木の業績は安定していますので、建築の売上総利益率を12~14%程度まで引き上げなければならないと思っています。
現在は価格転嫁への理解は進んでいますが、依然として交渉が難航するケースがあります。建築売上高のうち、10~15%程度は価格転嫁が十分に進んでいないという印象です。
――中野サンプラザや渋谷スクランブルスクエアの工期遅延、五反田の複合施設「TOCビル」の計画延期など、25年は建築費高騰による計画の見直しが相次ぎました。建築費の高騰は今後も続く見通しの中、どう取り組んでいきますか。
確かに建築費は上がっていますが、それ以上に高騰しているのが、電気・空調系の設備コストです。
かつて一般的なオフィスビルでは、坪150万円のうち、「建築100万円:設備50万円」という1対0.5の割合でした。しかし現在は、建築が200万円ならば、設備も200万円というふうに、比率が1対1になっています。これは資材価格だけでなく、設備工事などサブコンの社員・職人の不足が深刻で、市場単価が上がっていることが大きな原因です。このコストをどう下げていくか、もしくは安定させるかが鍵となります。
解決策は、サブコンの業績を今のうちにしっかり上げてもらい、会社の基盤を安定させること。それによって社員さんや職人さんがもっと集まる環境にすることが、実は一番の近道ではないかと思っています。(業界全体で)いかに業績を安定・成長させていくかが重要です。
――業界全体でサブコンの人手不足解消を促し、業績を安定させることが、長期的に見れば建築費上昇の抑制につながるということでしょうか。
私はそう考えています。あとは、職人さんの担い手不足対策ですが、これは年収を上げることです。われわれもしっかり協力会社の職人さんに報酬が回るようにしていきます。中長期的には年収を向上させて、(業界全体で)職人不足の解消をしていく必要があると思います。
当社の技術系社員については、通年採用の強化もあり不足しているわけではありませんが、年収を上げるようにしています。1990年代から実質的な年収が日本全国で停滞していましたので、直近3年間はベースアップを実施しました。待遇の改善は引き続き必要だと思っています。
――建築費の高騰が続けば、短期的には不採算案件を回避できますが、長期的にはデベロッパーの投資が先細り、受注減少や日本経済の地盤沈下につながるリスクもあります。大成建設を含め、今後の建設業界の見通しをどう描いていますか。
建築費の高騰で先行きに不透明感が増す中、大成建設はどこに勝ち筋を見いだしているのか。次ページでは、相川社長に物価高での生き残り策とM&A戦略について明かしてもらった。







