家事や育児は間違いなく立派な労働であり、尊重されるべきものだ。しかし、普通の民主的な国ではそれと「年金」という社会保障制度をごちゃまぜにはしない。厚生労働省年金局の「第3号被保険者制度について」という資料にもちゃんとこうある。

「国民皆年金である日本と異なり、諸外国の年金制度の適用範囲は、稼働収入のある者に課されるのが一般的」

 多くの社会では年金というものは「働いて保険料をおさめた者が受け取る」というシンプルなルールだ。

 では、出産や育児で働くことができなくなった人はどうなるのかというと、その期間は「保険料を納付した」とみなされるケースが多い。ドイツ、イギリス、フランス、スウェーデンなどがそうだ。

 アメリカは専業主婦に対して、夫の基本年金額の50%相当額の配偶者保険給付が支給されるが、「サラリーマン夫の扶養に入れば何も払わなくとも年金が満額もらえる」という日本の制度とはだいぶ異なる。

 では、世界的に見てもかなり「異常」に見える主婦年金が、なぜこの国ではできあがってしまったのか。

 ネットやSNSでは「日本は朝から晩まで男が働かなくてはいけなかったので、それを家庭で支える主婦の役割が重要だった」とか「日本人は古来から家を女性が守るという意識が強かった」などと説明されることが多いが、どんな社会でも「専業主婦」は存在しているし、「家」を守るという発想もある。

 にもかかわらず、なぜ日本は「主婦は保険料を払わずとも年金を受け取れる」という特例措置を施したのか。

 時の政権が「主婦」に何か弱みを握られたのかとか、「主婦」を優遇しなければいけない事情があったなどの「陰謀論」が頭に浮かぶ人もいるだろうが、個人的には「国民皆年金」という、これまた世界的に見ても珍しい制度がもたらした「弊害」だと思っている。

 先ほど引用した厚生労働省年金局の資料にもあったように、諸外国は「国民皆年金」ではない。年金は働いた人がもらうものなので、「年金をもらえない人」もいるのが普通だ。ただ、過去には年金受給資格のない人にも手厚い支援をした旧ソ連のような社会主義国も存在した。