これはホントにスズキなのか

 今回お届けするのはスズキの電気自動車、e VITARA。

 スズキ初の量産BEV(ガソリンエンジンを持たない、バッテリー電気自動車)である。となると気になるのは航続距離、あるいはモーターならではの加速感か。それらはもちろんEVとして大事な要素だ。しかし深夜2時の首都高を飛ばしながら感じたのは、そうした「EV的な話」ではなかったのだ。

 これは本当にスズキなのか……。長いトンネルの中で思わずひとりごちた。

 ステアリングの中央には、大きくスズキのSマークが鎮座している。間違いなくスズキのクルマだ。だが乗り味だけを取り出せば、長年抱いてきた「軽く、簡潔で、スッパリ割り切った」スズキ像からはかけ離れたクルマに仕上がっている。重厚で、静かで、どっしり落ち着いている。これがホントにスズキなの?

スズキ「e VITARA」スズキ「e VITARA」 Photo by F.Y.

湾岸線で際立つ重厚な安定感

 3号渋谷線用賀入口から始まる首都高一筆書き大回りコース。山手トンネルを抜け、板橋JCTの急な右カーブを走る。複雑にうねり、アップダウンする首都高速中央環状線。荒川沿いに右カーブ。

e VITARAで夜の首都高を走るe VITARAで夜の首都高を走る Photo by F.Y.

 かつしかハープ橋を越える。橋の上では路面の継ぎ目と横風が容赦なく車体を揺さぶる。ショボいクルマなら正体を表すシーンだ。足がバタつく。車体が遅れて揺れる。そして音がこもる。ところがe VITARAは、そうしたショボい要素が一切現れない。荒れた路面をクルマの奥の方にいったん飲み込んでから、角を取って乗員に渡すような印象だ。

 湾岸線へ入ると、さらにその印象は強くなった。

 この道は速度域が高い。遅い時間なら尚更だ。加えて今日は横風が強い。路面も荒れてバンプが多い。大黒PAへ向かう直線道路の路面は滑らかとは言い難い。だがe VITARAは驚くほど落ち着いている。床下に大きな電池を抱えるBEVだから当然重心が低い。そして重い。しかしその重さが悪さをしない。直進安定性と重厚な乗り心地で、むしろ“厚み”に変わっている。何というか、高級車の乗り心地なのだ。