「軽さこそ正義」のスズキが、重いクルマを出した
軽さは運動性能につながり、燃費を向上させ、価格にも直結する。スズキの“叡智”そのものだ。
スズキは「軽さこそが正義」を旨としてきた会社である。ところがこのe VITARAは違う。
床下に大きなバッテリーを抱えている。日本仕様の車両重量は49kWhの2WDで1700kg。61kWhの2WDで1790kg。そして61kWhの4WDは1890kgと、2トンに迫る勢いの堂々たる重量級だ。
「おい! 重過ぎるぞ。ウチのクルマがこんなに重くてどうする!」と、天国から鈴木修氏の怒鳴る声が聞こえてきそうではないか。
e VITARAは、フロンクス、ジムニーノマドに続き、インドで生産され日本に輸入される「スズキ初の量産BEV」である。
土台となるBEVユニットとプラットフォームは、スズキ、トヨタ、ダイハツの3社で共同開発したものだ。トヨタには兄弟車としてUrban Cruiserなる車種が用意されている(今のところダイハツの兄弟車は発表されていない)。浜松の思想、インドの生産、トヨタ陣営との協業、そしてBYD系FinDreams Battery製のLFPバッテリー。それらが一台の小型SUVに詰め込まれ、日本へ輸入される。いかにも今風で、いかにもグローバルではないか。
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重さがマイナスになっていない
大黒PAに入る。EV充電スペースには群馬ナンバーのスーパーカーが停まっている。行儀の悪い輩(やから)どもを見物しながらコーヒー休憩。
再び本線へ戻る。横浜の環状線を回り、首都高の継ぎ目とうねりをもう一度なぞる。やはり印象は変わらない。重いのに鈍くない。静かなのに退屈ではない。そして軽快なのに薄っぺらくない。見事な仕上がりだ。
軽さで戦ってきたスズキが、ついに重いクルマを出した。しかし重さを敵に回さず、むしろ味方に付けている。e VITARAの最大の美点はここにある。
500万円超のスズキ、室内の正直な話
……と、こう書くと手放しで褒めているように見えるかもしれないが、無論そんな単純な話ではない。
今回試乗したのはe VITARAのZ 4WD、61kWhバッテリー搭載車である。フロントに128kW、リアに48kWのモーターを搭載し、前後輪を電気で駆動するシステムで、素のお値段は492万8000円。試乗車はオプション込みで507万1440円だ。
ついにスズキのクルマも乗り出し500万円を超えてきた。まあ軽でも300万超が普通の時代ですからね。諸物価高騰の折、これは仕方がありませんか。
ではその価格に見合うだけの豪華さが室内にあるのだろうか。
うーむ……多少口ごもることになる。内装はよくまとめられている。メーターまわりも現代的で、操作系もスッキリ分かりやすい。だが実際に触れる部分の質感や、細部の仕立ては残念ながら「もう一歩」という印象だ。このクルマに「500万円だから」と豪華さを求めると、肩透かしを喰らうことになる。
e VITARAの内装 Photo by F.Y.
e VITARAのメーター Photo by F.Y.
そこにはやはり、スズキらしい“割り切り”が感じられる。e VITARAは「見せ方」ではなく「土台」の方にコストを掛けているのだ。
車体の落ち着き、足まわりの動き、静粛性、直進安定性。カタログ写真では伝わりにくい部分にきちんと手が入っている。外から見て、車内に乗り込んで「高そう」に見せるのではなく、走らせたときに「ああ、良いクルマだなぁ」と思わせるタイプのクルマだ。







