EVとしての「厳しい現実」と、それでも勧める理由
一方でEVとしての「厳しい現実」もある。
WLTCモードで472km。とはいえ、ガソリン車やディーゼル車のように、どこでも数分で満タンというわけにはいかない。自宅や職場に充電設備がある人と、公共の急速充電だけに頼る人では、このクルマの評価は大きく変わるだろう。長距離を走るなら、綿密な充電計画が必要になる。行き当たりばったりで遠出すると地獄を見ます。マジで。
遠出する場合は、綿密な重電計画が必要になるはずだ Photo by F.Y.
価格も従来のスズキ車の感覚からすれば安くない。いや、明らかに高い。スズキのクルマが500万円と聞けば、ウッと身構える人は少なくないだろう。それでもe VITARAを「高いスズキ」と一言で片づけてしまうのは、乱暴だし勿体ない。
スズキはこのクルマを外部と組み、自社“だけ”で造らなかった。いや、造れなかった。軽さだけでは成立しない。安さだけで抱え込まなかった。自社単独で突っ走るには、BEVはあまりにも複雑で、重く、コストがかかる。
そこでスズキはインド生産を選び、トヨタ、ダイハツと組み、BYD系のバッテリーを採用し、そこに得意の小型車造りの叡智を加えたのだ。その結晶がe VITARAというわけだ。だからスズキらしくないようでいて、実は思い切りスズキらしい。
首都高を大回りして用賀に戻ってきた際、最初に山手トンネルで浮かんだ言葉がまた頭をよぎった。
……これってホントにスズキなの?
e VITARAは「新しいスズキ」を体現するクルマだ
150キロ走って得心した。e VITARAはやっぱりスズキである。
ただし、これまでの文法とは少し違う。BEV時代に向けて、インドの生産力とトヨタ陣営との協業を取り込み、これまでなら弱点になりかねなかった重さを商品力に変えようとする、“新しいスズキ”である。
とはいえ全ての人に勧められるクルマではない。充電環境は必要だし、お値段も安くない。内装にも割り切りは残る。だが、走らせてみれば分かる。
e VITARAは「スズキ初めての量産EVだから、まあこんなものか……」と大目に見るクルマではない。クルマとして、素直に出来がいい。
軽さこそ正義だったスズキが、重さを味方につけた。安さだけではない価値を、キッチリ走りで示してきた。
e VITARAは、スズキにとって大きな分水嶺となる「記念すべき一台」になるのではあるまいか。深夜のドライブで再びひとりごちたのであった。
スズキ「e VITARA」 Photo by F.Y.
e VITARA試乗車のタイヤ Photo by F.Y.
それでは最後にこのクルマの○と×を。







