人と古木が対峙する「空間」デザイン市場を開拓
――古木はアートやラグジュアリーの領域と親和性が高いとのことですが、この領域に参画するために行っていることとは。
山上 アートやラグジュアリーの領域では、欧州を中心とした海外市場に注力しようと、2022年から構想を練ってきました。その一環として、古木のグローバルブランド「SANSUI」を立ち上げ、23年には商標登録をしています。
SANSUIを通して、自然を敬い素材を生かし切る日本の精神が体現された古木を世界に広め、各国のアーティストやデザイナーとともに古木の新しい価値を創造することで、未来に向けて日本文化を継承していきたいと考えています。
――海外では「SANSUI」ブランドをどのように展開していますか。
山上 2023年と24年には、フランス・パリで開催されたインテリア・デザイン関連の国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に、SANSUIとして古木の家具やオブジェを出展しました。
ここで古木の価値を訴求したことがきっかけで、海外のバイヤーやキュレーターとつながり、ネットワークが広がって、ミラノでの「FUTURE MEMORIES」が実現したのです。
アートに関しては、24年に森美術館(東京都港区)で開催された「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」で、米国・シカゴを拠点とするアーティストのシアスター・ゲイツ(Theaster Gates)氏の作品を展示するための巨大な什器(じゅうき)を古木で制作しました。
ゲイツ氏の意図をくんで当社スタッフが図面を起こし、古木の3Dスキャニングシステム(「上」参照)を使いながら職人が古木を加工するという、“チーム山翠舎”が一丸となってアート作品に関わった案件です。
――アート作品への転用を中心に、古木の価値を世界的に浸透させていくのですか。
山上 これからは、素材や素材から生まれたプロダクト単体のみならず、空間全体での価値を重視する時代になっていくと考えています。
古木には、置かれるだけで空間の重心となる不思議な力があります。長きにわたって人々の営みを見てきた古木に人は視線を引き付けられ、静謐(せいひつ)な時間と向き合える空間がそこに生まれます。
日本国内では古木を用いた店舗やホテルの施工を以前から多数実施していますが、今後、海外でも空間の価値を決定づける中心的な素材としての古木の需要が高まると予想しています。
そのため、海外市場においては、家具やアートのプロダクトデザインとともに、商業施設などの空間デザインという建築分野でのポジション獲得をめざし、古木価値の認知向上と活用を促進していきます。
現時点においても、欧州の先端デザインやファッションの発信拠点に新しくオープンする商業施設で、古民家数棟分に相当する古木を使う大規模プロジェクトが進んでいます。その地域を象徴する歴史的建造物内に造られるため、時間資本である古木との相性が良く、新たな未来のストーリーを描けるものと思います。
他にも、世界的なラグジュアリーブランドの店舗で古木の採用が決まっており、欧州で古木を活用する流れがきていると感じます。







