そして今、アメリカで起きている「エントリー層(=新卒・既卒)の排除」というAI解雇の嵐は、かつての日本の就職氷河期以上の規模で、この「世代の断絶」を再現しようとしている。今後「組織力の劣化」が起こるのは必然だろう。
日本型の終身雇用と年功序列は非効率さを批判されてきたが、実際は、両者がもたらしていた美点を、新卒採用を極端に抑えることで壊したことが、日本企業の凋落を加速させた面もあったと考えられる。
見逃してはならないのは、アメリカでは調査対象企業の59%が人員削減を「AI主導」と説明することで、投資家評価を高めている事実だ。株主重視の傾向が強まっている日本において、このロジックが企業経営陣の会議室に持ち込まれる日は、そう遠くはない。
実際、日本でもジョブ型雇用への移行、AIツールの企業導入、スタートアップへの人材流出など、「AIを使いこなせる人材を優遇する」動きは確実に加速している。これは方向性の問題ではなく、速度の問題だ。
かつての組織論は「優秀な人材を増やして組織を強化する」ことだったが、これからは「少数の傑出した人材+AI」が大型プロジェクトを代替する時代になる。「100人の凡庸な社員」より「1人の傑出した人材+AI」が案件を動かすようになれば、報酬と機会は一部に極端に集中する。
「傑出した1人」になるための「3つの軸」
AI時代の格差は、資産格差以上に「能力×AI活用力」の格差として顕在化する。ロバート・ハーフの調査では、AI・MLエンジニアの年収中央値は17万750ドルで、一般的なソフトウェアエンジニアとの賃金格差は前年の15.8%から18.7%に拡大している。「AI活用スキルの有無」が報酬の分岐点になりつつある現実が、ここに表れている。
では、「傑出した1人」として生き残るために何が必要か。3つの軸で整理する。
(1)第一の軸:問いを立てる力
国際政治学者で、テクノロジーの地政学リスクにも詳しいイアン・ブレマー氏は、AI時代において「プロンプト(=指示)」よりも、その前提となる「アジェンダ設定(何が問題かを定義する力)」が人間の最も重要な付加価値になると述べている。
答えを出すのはAIの得意分野であるが、「何を問うべきか」を決めるのは人間の領域にある。情報収集や要約はAIに委ね、「本質的な問い」を見極めることに集中できる「質問力」のある人材が、抜きん出る。
AIはあくまで「答えの生産工場」であり、「問い」を設計する能力がなければ質の高い「答え」は生産できない。







