おばさんなの?軍人なの?
属性不明な「キューピーさん」

P15同書より転載

 平安貴族のような殿上眉に、妙につぶらな瞳。頬にはほうれい線がしっかりと刻まれている。服は水兵用のセーラー服か。これは果たして赤ちゃんなのか、おばさんなのか、軍人なのか。属性不明の独特なキューピーだ。

 意図的というより、絵心の無さと作画技術の限界で、そうなってしまった趣がある。

 下方の網目状の物体は、果物などの収穫に使う盆ざると思われる。絵は雑なのに、丁寧なさん付け。このギャップも可笑しいが、「キューピーさん」の呼称は、大正時代のキューピー人形ブーム期には、童話や童謡などにおいてしばしば使われていた。

 三浦正吉は、大正後期から昭和初期にかけて東京・大崎で食品関係の事業を行っていた。この商標権は、後にキユーピー社が買い取って保有しているが、持て余していそうではある。

裸にハイソックスを履いている
不思議な格好をしたキューピー

P16同書より転載

 キューピー人形といえば、三等身程度のずんぐりむっくりした体形で、愛らしく微笑む裸の赤ちゃんと相場が決まっている。

 しかし、このキューピー、なんだか笑顔がぎこちなく、こそこそ右方の様子をうかがっているようだ。そして何より、全裸にハイソックス姿である。

 商標権者の小林坂太郎は、広島県で清涼飲料や柿渋の製造販売業を営んでいた。柿渋とは、渋柿から採れる、防腐効果などのある抽出液である。

 小林は、遅くとも昭和40年代頃まで「キューピーラムネ」というラムネを製造していたようだ。裸にハイソックスは、小林のこだわりだったのかもしれない。この商標権も、後にキユーピー社が買い取っている。