マヨネーズと石鹸と胃腸薬…
少しずつ違うキューピーの絵

P17同書より転載

 これもなんとも素朴なキューピーだ。阪本徳兵衛は、大正時代に大阪でアカネヤ薬局を経営しており、このキューピーは石鹸のマークとして使われた。昭和10年代頃までは営業していたようだ。

 彼は歴史に名を残していないが、実はこのキューピーマークは、今も形を変えて生きながらえている。

 商標権が、遅くとも昭和11年(1936年)には、共進舎石鹸、今の牛乳石鹸共進社に譲渡されているのだ。そう、今日も販売されている同社の赤ちゃん用石鹸「キューピーベビーせっけん」につながるマークなのだ。

 また、阪本は医薬品分野でも同じロゴを商標登録しており、こちらの権利は後に日本臓器製薬に譲渡され「キューピー胃腸薬A錠」などの商品になっている(現在は終売)。

 いくつもの事業者が、キューピーという名のバトンをつないでいるのだ。

日魯漁業で使用されていた
キューピーは高クオリティ

P18同書より転載

 述べた通り、マヨネーズのキユーピー社のキューピーマークは、もともと日魯漁業(現・Umios)から融通されたものだった。では日魯漁業のキューピーマークはどんなものだったのだろうか。

 それがこのロゴマークだ。キユーピー社の初代ロゴマークのデザインとほとんど変わらず、他の十把一絡げのキューピーマークと比べて完成度が高いことがお分かりだろう。

 日魯漁業の前身企業である輸出食品社時代の大正8年(1919年)頃から、サバやサケの缶詰に使われていた。

 太平洋戦争前まで、同社は「キューピー」「オーロラ」「あけぼの」を自社の3大ブランドとして打ち出していた。しかし、ヨーロッパなどへ輸出したキューピー缶詰が、「赤ん坊が缶の中にいるようだと嫌われて(※『日魯漁業経営史 第一巻』(水産社)1971年、393頁」以降、使用が控えられ、ブランドとしての歴史に終止符を打つ。