ただし、トヨタとて27年3月期の業績予想は慎重だ。売上高は51兆円(前期比1%増)と増収だが、営業利益は3兆円(同20%減)と再び減益を見込む。HV需要は堅調だが、中東情勢による減産などで6700億円程度、利益が押し下げられる見込みという。

 近社長は難局に挑むことになるが、筆者が最も印象深かったのが、「『トヨタが成長することはいいことだ』と多くの方々に思っていただかなければならない」という発言だ。

近社長の発言の背景に
豊田章男会長を支えたキャリア

 近氏は、経理部長からCFO(最高財務責任者)になった人物だ。社長に内定した際のお披露目会見でも、「損益分岐台数の上昇に歯止めがかかっておらず、この損益分岐台数を引き下げていく」などとトヨタの「稼ぐ力」へのこだわりを強調していた。

 今回の決算会見でも、次から次へと環境が変わる逆風下において、持続的成長に対する強い想いを語った。例えば、「現場で原価を下げていく」「製造業の強みはモノと現場があることだ」などだ。

 近氏のキャリアでもうひとつ見逃せない点は、経理・財務畑の一方で、豊田章男会長が社長に就任した時から8年間、社長付の秘書を経験したことだ。

「豊田章男社長の14年間と佐藤恒治社長の3年間、計17年間は『もっといいクルマをつくろうよ』を合言葉に、商品と地域を軸にした経営を推進した」

「今後は、もっといいクルマをつくる人を増やしたい。私の使命は、成長のための投資を緩めずやり切ることだ」

 こう力強く発言した背景にも、豊田章男会長を慕い、会長からの信頼も厚いことが挙げられるだろう。豊田氏は09年のリーマンショックでトヨタが赤字に転落した直後、社長に就任した。その際の社長秘書として、近氏は「しっかりしなければならない」と痛感したと語っている。

そりゃトヨタの独り勝ちだわ…伝説の「大番頭政治」を彷彿とさせる、新社長が放った“強気の一言”トヨタ発表資料