第2は、子育て世代にとっての負担増になることから意味はないという批判です。しかし、同世代の子どもを持たない人々には純負担増ですが、子育て家族には保育サービス充実のための独自の財源の保証という、それ以上の大きな利益が生じます。

 また、介護保険では、高齢者層の年金から保険料を天引きする仕組みが完備されており、子ども保険に対しても将来の勤労世代を増やすために高齢者にも一定の負担増を求められます。

 第3に、介護保険料と同額の保険料では大きな財源にはならないという批判には、児童手当のような現金給付を抑制し、保育所や学童保育等の現物給付に特化することで賄うことができます。

「老人福祉」を180度転換したように
子育ての負担も発想の転換が必要

 子ども保険の利点は、単なる財源確保の手段だけではありません。介護保険と同様に、子育て支援を、上から目線の児童福祉の世界から、利用者が権利として保育等のサービスを購入できる、健全な保育サービス市場への転換を実現させる手段ともなります。

 現行の児童福祉には、本来は「子どもの保育は家庭の責任」という大きな前提があります。その上で、母親がやむを得ず働かなければならない、例外的な家族の子どもを行政が保護するという論理になっているからです。

 しかし、これは男女が共にフルタイムで働き続けることが標準となっている現代の日本の状況とは相容れません。2000年施行の介護保険で、それまで高齢者の介護は家族の責任が原則という「老人福祉」の考え方を180度転換したように、「子ども保険」で子育ての負担も社会全体で担うという発想の転換が必要とされます。

 この結果、現状との大きな差は、母親が働いていない家族も、子ども保険による保育や幼児教育サービスを平等に受けることができ、それだけ子育てのコストが小さくなることです。これは介護保険サービスが、家族の就労状況と無関係に受けられることと同様です。

 現行でも、保育所に空きがあれば、母親が就労していない場合にも保育サービスを利用できますが、あくまでも例外的な扱いです。現在の保育所や幼稚園は、単に子どもを預かるだけの場所ではなく、子ども同士のコミュニケーションや好奇心という「非認知能力」を育てるための重要な場所となっています。その意味では、誰でも利用できる保育所が必要な時代となっています。

 他方、保育所が児童福祉の場でなくなると、障害児のような手間のかかる子どもを受け入れてもらえなくなるという懸念もみられます。これに対しては、介護保険の要介護認定と同様な「要保育認定」も導入すれば、障害者や病児保育には手厚い「保育報酬」が用意できます。

 こうした保育サービスの充実を図れるという、子育てサービスの供給面でも大きな利点があることが、財源面だけしか考えない「子ども・子育て支援金」という手段との大きな違いです。