細井弁護士:実務上は、「一定時間を超えた場合には一度対応を区切る」「判断に迷う場合は必ず上長に確認する」といったルールをあらかじめ設けておくことが重要です。例えば、「一度社内で確認のうえ、折り返しご連絡いたします」と伝え、いったん通話を終了することで、冷静に対応方針を整理できます。
現場担当者に判断を委ね続けるのではなく、適切なタイミングで組織対応へ切り替えることが、トラブルの長期化や悪化を防ぐだけでなく、従業員の負担軽減や離職防止にもつながります。
感情面への配慮に
とどめる対応が基本
細井大輔(ほそい・だいすけ)/弁護士。2007年弁護士登録。日本で最も歴史のある渉外法律事務所・ブレークモア法律事務所にて企業法務を中心に取り組み、2016年に大阪・北浜にて「かける法律事務所」を設立(現在法人化)。企業法務・コンプライアンス・不祥事対応・知的財産・M&A・労務人事問題など幅広い分野を手がけ、企業の持続的成長を法務面から支援。コンプライアンス研修・ハラスメント予防研修の講師としての登壇実績も多数。
――カスハラでは謝罪をすると危険なケースがあると聞きます。毅然(きぜん)と対応すべき事例をぜひ教えてください。
細井弁護士:カスハラ対応では謝罪の仕方を誤ると、かえってトラブルを拡大させるおそれがあります。特に、責任関係が明確でない段階での安易な謝罪や踏み込んだ表現は、「非を認めた」と受け取られるリスクがあります。
実務上は、「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」など感情面への配慮にとどめる対応が基本です。一方で、「当社に不備がありました」「全面的に当社の責任です」「損害は賠償いたします」といった、法的責任を前提とする発言は避けるべきです。書面での謝罪についても、同様に慎重な判断が必要です。
また、金銭の支払いや損害賠償に安易に言及すると、相手方に過度な期待を与え、要求がエスカレートするおそれがあります。こうした対応は、必ず事実関係を整理したうえで、会社として判断すべき事項です。
もちろん、適切な謝罪が有効に機能する場面もありますが、要求が強まっている場合や不当な主張が含まれる場合には、謝罪よりも事実確認と対応方針の整理を優先し、組織として毅然(きぜん)と対応することが重要です。
高額な金銭や土下座の要求は
通常の範囲を超えている
――カスハラに悩んだらどのようなタイミングで顧問弁護士などの専門家へ相談すべきでしょうか。
細井弁護士:カスハラについて専門家へ相談すべきタイミングとしては、まず高額な金銭請求や、土下座の要求、謝罪文の提出要求といった不合理な要求がなされた場合が挙げられます。
これらは通常のクレーム対応の範囲を超えており、早期に組織として対応を切り替えるべき局面です。
また、要求内容に限らず、その方法や態様が過度である場合も重要な判断基準です。
例えば、長時間の電話や繰り返しの連絡、威圧的な言動、担当者の交代や個人情報の開示を求めるといった行為が見られる場合には、現場対応の限界を超えている可能性があります。現場担当者が対応に迷った時点で相談することも有効です。
弁護士が関与することで、対応方針を整理し交渉窓口を一本化することができるため、現場の負担軽減と早期解決につながるケースも少なくありません。
弁護士費用を踏まえても、離職リスクや長期対応によるコストを考慮すれば、早期に相談・依頼することが合理的な選択となる場面は多いといえるでしょう。
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