そしてもう1つは、そのほとんどはあまりに無意識に行なわれすぎていて、言われてみないと気づかないということである。指摘されても自覚できない場合もあるだろう。
実際、研究では、サッチャー自身が思わせぶりなメッセージを発していたことが明らかになっている。
記者との間で起きていた
発言終了サインのズレ
研究者たちは、サッチャーの「降下の激しさ」をもう少し細かく調べた。大きく分けて、「降下する声の高さの程度」と「降下に要する時間」とである。
まずは前者だ。ジャーナリストが話を重ねてしまったときは平均で167ヘルツ降下している一方で、サッチャーの話が本当に終わるときは平均で141ヘルツの降下しか起きていないことがわかった。わずか26ヘルツの差だが、どうやらサッチャーはこれを発話の終了のシグナルとして使っていたようだった。
ところが、サッチャーは高さの降下に要する時間にもムラがあった。発言の重複がなかった場合に比べ、重複が起きてしまったときには降下に要した時間は2分の1になっていたからだ。不幸なことに、ジャーナリストたちはこれを手がかりにしていた。ところがこれは特に重要な信号ではない。
まとめると、サッチャー自身は声の高さを一定程度降下させることで話の終わりを伝えているつもりだった。ところがジャーナリストは降下に要した時間を手がかりにしており、これが原因ですれ違ってしまっていたのだ。
おそらくサッチャーもジャーナリストたちも、ここまでわずかな違いでコミュニケーションの失敗が起きてしまっていたことは知らなかったはずだ。
会話は0.2秒で話者が交替する
高度なゲームだった
こんなゲームを考えてみよう。プレイヤーは2人で、どちらか一方が手を挙げている時間をできるだけ長くするという、シンプルなルールだ。
ただし、禁止事項がいくつかある。
・2人が同時に手を挙げたらその時点で失格
・2人とも手を挙げない時間が0.2秒間続いても失格
・一方で、片方が手を挙げ続けるのも禁止。挙手時間は最大で60秒までとする
つまり、プレイヤーは手を挙げる人を0.2秒以内に交替し、それをできるだけ長く続ける必要があるわけだ。







