2023年に私が飛び込み授業でその学校に行ったときには、教室にいませんでした。
前の時間に担任の先生に叱られて教室を飛び出していたのです。慌てる校長先生。私に飛び込み授業を任せた理由が「厳しい学級だからこそ見にきてほしい」という主旨でしたから、ある意味、彼がいなければ教室の実態を知ることができません。
「じゃあ、彼を待ちましょう」
私はそう言いました。小学校教員時代から「ひとりも見捨てない」という信念を持っていたので。
問題のある生徒に見えても
内面は素直でいい子
やがて彼が連れ戻されてきました。
いちばん前の席に座った清水くんは、私のことを睨みつけました。「この人が俺に仕返しでもしてくるのか」と言わんばかりの表情でした。椅子に座って半身に構えて、こちらを見ていました。
声をかけても素直に受け止めようとしません。私の存在はあくまでも「敵」。この人は自分を叱りにきたのだと。周りの子どもたちが彼に近づけないのもわかります。
しかし、授業が終わったあとの彼と校長室で話した際には、いたっていい子でした。彼は自ら訪ねてきたのです。もしかすると私の授業を楽しいと思ってくれたのかもしれません。そして、授業が終わってもとの雰囲気に戻るとまた「教室に自分自身の居場所がない」状況に戻ってしまう、と感じたのかもしれません。
当時は野球のワールドベースボールクラシック(WBC)が大いに話題になっていて、彼は出場した全選手の顔と名前を憶えていました。それを楽しそうに話すのです。こちらが「うんうん、すごいね」とうなずくと、彼はもっと嬉しそうに話を続ける、という具合でした。
いずれにせよ、校長室では教室とはまったくその表情が違いました。
楽しく話を続けて、清水くんとは記念撮影までしました。彼は終始ニコニコでした。動画も撮りながら「こうやって楽しく話している、そんな一面もあるってみんなにも伝えようね」と話したら、「うん」と嬉しそうにしているのです。







