教科での正解というものさしだけだと、子どもたちは、国語や算数の問題に答えられなかったら教室からはみ出ていきます。すると居場所がなくなっていき、教室で暴れたり、授業を妨害したり、はたまた清水くんのように他の子どもたちを傷つけたりします。それらはやがて学級崩壊や保護者からのクレームへと転じていきます。そして教師も病欠に入るという負の連鎖です。

 病欠になった教師は、復帰後、まず特別支援学級を担任することも多いです。多くは学校側の「ひとまずは人数の少ない学級から復帰の道を進んでほしい」という配慮からです。

 そこで問題となるのは、そもそも公立小学校の先生の数が足りないということです。なり手が少なければ、欠員を補う講師の先生も足りていません。すると普通学級の先生も人材難になっていきます。

 つまりは、通常学級でコミュニケーションをとり合えていないがために子どもが教室からはみ出す存在となり、特別支援学級が増えるのです。

 この負の連鎖は、子どもたちが壊れていく原因にもなっています。特別支援学級にはもともと支援が必要なお子さんもいるでしょう。しかし、清水くんのように通常学級で学力的な点からはみ出すような存在になり、「あなたはもうみんなと違うから来年は特別支援学級ね」というようなかたちで転籍する子どもも一定数います。

 清水くんが最初の小学校で厳しく指導を受けた体育の先生が、臨時講師の方だったという点からも人材難が遠因だったのではないか。そんなことも思います。

クラスの4分の1以上が
支援学級という学校も

 現に特別支援学級の児童生徒数の推移は、平成23(2011)年の15万5255人が令和5(2023)年37万2795人と約2.4倍になっています(文部科学省「学校基本調査」)。教員不足の要因のひとつとなっているのは間違いないでしょう。

 たとえば沖縄県では、実際に増加の度合いが高すぎるとして地元からも問題提起されています。「沖縄タイムス」は、連載記事「学びはだれのもの」で次のように報じています(2020年8月21日)。

『足型をはめられた子どもたち』書影足型をはめられた子どもたち』(菊池省三、講談社)

「県内の小中学校で増え続ける特別支援学級や自閉症・情緒障がい学級の児童生徒。全体の学級数の4分の1以上が支援学級という学校も現れ始めた。これまで見過ごされていた発達障がいの子に支援が届くようになったとされる半面、急速な変化には懸念や批判も広がっている」

 さらに同紙は同年9月8日、小学校で起きた問題を取り上げました。

「沖縄本島中部の小学校のクラス担任を務める女性教員が、普通学級と一緒に授業を受けていた特別支援学級の児童が騒いだ際『うるさいと思う人、邪魔だと思う人は手を挙げてください』と普通学級の児童に挙手を求めていたことが7日、わかった。手を挙げない児童に『あなたも支援学級に行きなさい』とも発言」

 こういった状況を含め、仮に子どもを安易に支援学級に転籍させるというのであれば、これもまた日本の子どもが壊れていっている実態です。私は近い将来、飛び込み授業で訪れる学校で「特別支援学級のほうが多い」という学校に出合うことになるのではないか。そんなことも予想しています。