その時の対象年齢層は80代から90代。私がかかわっている患者さんたちですから、すでに通院が難しい方々です。「人生の最終段階」についてリアルに考える年代です。

 そのみなさんに、このご希望についてお話を聞きました。すると驚くべき結果になりました。

 私の予想ではほとんどのみなさんが延命処置を希望しないと言うかなと思ったのですが、実際には違いました。

 70人中30人程度、割合にして40%以上の方が、自分も若い人と同じように救命されたいと望んだのです。

人は自分のことを
老人とは思っていない

 私の実際の質問は詳しく言うと、こうでした。

「発見されたときに、あなたはすでに呼吸がなかったとしましょう。若い人であればそれでも可能性にかけて救命処置が行われます。そこで質問です。あなたはこの救命処置を望みますか?

『もう歳だから痛いことやつらいことはされたくないから、いやだ』と言う方もいます。一方で、『若い人がしてもらっているのだったら自分だってしてほしい。自分のことを年寄り扱いするな』と言う方だっていますね。あなたのご希望はいかがですか?」

 私の予想では、ほとんどの方が「無理な救命は望まない」だと思っていたので、この結果には少々驚きました。

 ですが、よくよく考えると、ごく当たり前のことのようにも感じます。というのも人というのは、自分のことをそんなに年寄りだとは思っていないということです。

 たとえば私は今50代ですが、うっかりするとちょっとかわいい洋服などを買ってしまいそうになって、試着をしてあわててあきらめたりもするのです。私をはじめ、多くの人が、自分のことをお年寄りとは思っていないわけです。

 自分のことをそんなにお年寄りだと思っていないからこそ、自分も若い人と同じように救命されたいと考えるのも当然のことのように思います。

親が生きているうちに
終末期医療の話をするのは難しい

 さて、ひるがえってあなたの話です。

 あなたは、今、延命治療について、自分の希望や意向を考えられるでしょうか。「もしものときに受けたい医療やケア」について考えられるでしょうか。実際にはなかなか難しい人が多いかと思います。