それよりも、「いま、まだできることは何なのか」に目を向け、それを大事にするほうが、はるかに意味があります。
残存機能を活かして、どう生きるかを考えてみてください。とくに、認知症の初期の段階では、物忘れなどの記憶障害が生じる程度ですから、できることはかなりあります。
たとえば、長谷川和夫先生(編集部注/精神科医。88歳のときに自身が認知症であることを公表)のように、自分自身の症状について発信し、認知症に対する理解を広げるような活動もできるかもしれません。
また、認知症になると、直近のことに関する短期記憶は失われやすいのですが、昔の経験などについての長期記憶は残るので、たとえば戦時中の思い出話のような、過去の経験を題材にした講演会などを行ったり、本にまとめたりすることも可能です。
がんや生活習慣病と
うまく共存するコツ
次に、「がんとともに生きる」です。
私が診てきたかぎり、高齢者の場合、がんを取り除く手術をすると、手術そのものの負担で体力が大幅に落ちます。胃がんなど消化器系のがんであれば、切除することで栄養の摂取に障害が生じるため、手術がうまくいったとしても、そのあとはげっそりとなることのほうが多いようです。
高齢期のがんは「あったらあったでしようがない」と思い、排除するより共存して生きることを考えたほうが、その後のQOL(生活の質)は高くなる、と私は確信しています。
長生きできるかという観点でも、高齢者のがんは一般的に若い世代のがんよりも進行が遅いので、がんになったままでも結果的にかなり長生きするケースはめずらしくありません。
そして、「生活習慣病とともに生きる」です。
血圧や血糖値、コレステロール値を下げるために薬を服用したり、食生活を制限したりしている高齢者はたくさんいます。
血圧を下げるのは、高血圧によって血管が破れ、脳卒中が起こるのを防ぐためとされています。たしかに昭和40年代くらいまでは、血圧がわずか140や150でも血管が破れ、脳卒中で死亡するケースが多々ありました。







