作家の今村翔吾氏 Photo:SANKEI
2022年に歴史小説『塞王の楯』で直木賞を受賞した、今村翔吾氏。受賞の瞬間がテレビで生放送され、授賞式には人力車で向かうなどメディアでも大きく注目されたが、今村氏にとって直木賞受賞はゴールではなかった。受賞の瞬間の涙の理由や、これからの書店業界に寄せる思いを作家自身が語る。※本稿は、作家の今村翔吾『書店を守れ!』(祥伝社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
憧れの直木賞を受賞し
「人力車」で授賞式に
2022年、私は『塞王の楯』で直木賞を受賞しました。公言していたように、私はどうしても直木賞が欲しかった。理由は2つあります。ひとつは、偉大な先達であり憧れの作家たち、すなわち池波正太郎先生、司馬遼太郎先生、藤沢周平先生が獲られている賞だから。もうひとつが、子供たちとの約束だったからです。
私は、2015年にダンスインストラクターをやめました。私が教えていた生徒の年代は、下は3、4歳から上は高校生までと幅が広かった。私はこの子たちに、「夢は叶うことを証明する」と言って、ダンススクールをやめたんです。子供たちも、そんな私を気持ちよく送り出してくれた。
だから、のんびりしていられないという思いがありました。教え子たちが若いうちに、言い方を変えれば、これから人生でさまざまなことに挑戦していく年代のうちに、背中を見せてあげたい。具体的には、10年がひとつの節目でした。中学生だった子が大学を出るくらいの年月、その間に直木賞を獲ったる、と。
結果的に、私はスクールをやめてから7年目で直木賞をいただきました。受賞の報せを受けた時、私は思わず泣いてしまいました。その映像が残っているようですが、あれは喜びの涙ではなく「間に合った」という安堵の涙だったんです。本当に、肩の荷が下りた思いでした。







