この書店が潰れたら
思い出も消えてしまう
しかし私が、きのしたブックセンターを訪ねた時は、平台に積まれている冊数はよくて2冊だった。ほとんどのタイトルは1冊こっきり。「積まれている」のではなく、ただ「置かれている」だけが大半でした。
在庫が少ないから、書店に行った時に感じる、特有のわくわく感もない。特に文芸書が少なかったです。事業を引き継いだあと、冊数を数えたところ、文芸書は100冊くらいしかありませんでした。文芸書は高単価ということもあり、財務状況が悪いと真っ先に削られるジャンルなのでしょう。
その日は雨だったこともあって、店内にはどんよりと暗い雰囲気が漂っていました。そこに、おばあちゃんと女の子が買い物に来たんです。小学校に入ってまもない小さな子でした。それを見た時、自分が子供の頃、祖父と一緒にブックスなかた(京都府木津川市)に本を買いに行った思い出が、鮮明によみがえってきました。私は今でもそこに行くと、おじいちゃんと一緒にここに来たよなと感慨に浸ることができます。
もし、きのしたブックセンターがこのまま潰れたら、この女の子のおばあちゃんとの思い出も消えてしまうのか……。そう考えていたら、なんだかやってみたいなという気持ちになったんです。
資料を見た税理士は
事業承継に反対した
それで、「僕でよければやってみます」と返事をしました──と、過去のインタビューではきれいにまとめているのですが、実を言うと、これはずいぶん端折っています。今回、そのカットした部分をお話しします。
確かに、「やりたい」と思いました。思ったのですが、当然ながら即決したら危ないので「デューディリジェンス(Due diligence)」という企業分析を行いました。買収に先立って分析レポートを取り寄せて、隅から隅までチェックするというものです。過去の決算もすべて載っている、かなり分厚い資料を見ます。そして、税理士さんにも相談しました。私の実家のダンススクールがお世話になっていた、付き合いの長い方です。







