実際、盛り上がりましたし、頼んでよかったと思っています。あとから聞いたことですが、直木賞の受賞の瞬間がテレビで生放送されたのは、私がはじめてのケースだったそうです。その放送を見て、日本文学振興会(芥川賞・直木賞などの選考と授賞を行う公益財団法人)のなかには、涙を流した方もいたとか。いわく「昔の直木賞のようだ」「お祭りみたいに盛り上がった時代に戻ったようだ」と。

書店員が呼ばれない
授賞式への“違和感”

 大きな文学賞の授賞式のあとは、たいてい「受賞パーティー」があるのですが、私はほとんど出たことがありません。というのも、私は吉川英治文学新人賞(『八本目の槍』)も、山田風太郎賞(『じんかん』)も、直木賞も、すべてコロナ禍の最中にいただいたので、ことごとくパーティーが中止になってしまったんです。

「残念だな、パーティー出たかったな」という思いがあるいっぽう、「ホテルの大広間を借り切って数千万円を使うなら、本や文学を盛り上げるためのお祭りのために使ったらええのに。受賞者を労うのもいいけれど、世間に対して訴えていくことのほうが大事なんじゃないか」と思ったのも事実です。

 それと、もうひとつ、直木賞のパーティーについては思うところがありました。受賞が決まった時点では、新型コロナウイルスがまた流行り出すなんて予想していなかったから、パーティーも普通に開かれるだろうと思っていました。だから、もちろん参加するつもりではあったのですが、違和感もありました。

 というのも、パーティーに出席したら、受賞者である私の前には、顔も名前も知らない初対面の人たちの列ができて、「おめでとうございます」と言われながら、延々と名刺交換をすることになるでしょう。でも、そこにはおそらく書店員さんはいません。大手チェーン書店の社長さんは来ているかもしれませんが、私の本の販促POPを書いてくれたり、読者にすすめて売ってくれたりした現場の人たちは、誰も呼ばれない。