直木賞を受賞できたのは
書店員達のおかげ
私のデビュー作『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』は、いわゆる「文庫書下ろし」というジャンルの作品です。大きな新人賞を獲得してデビューした人は、プロ野球で言えばドラフト1位で指名されたようなもの。対して「文庫書下ろし」で世に出た作家は、育成選手上がり、トライアウト(入団試験)を受けてプロの世界に入った、そんな立ち位置です。私自身は、自分の作品も含め、文庫書下ろしというジャンルを見下す気持ちはまったくないけれど、業界ではやや「格下」に見られるのは、否定しようのない事実です。
そういうところから出発した私が、読者に見つけてもらって、だんだんと名前を知ってもらえたのは、まちがいなく書店員さんのおかげです。書店員さんが、「今村翔吾の作品はおもしろいよ」と言い、「今村翔吾、単行本も書けるんや。なかなかおもしろいやないか」と言って、マイナーリーグからすこしずつ押し上げていってくれたんです。ある意味では私の受賞の立て役者である書店員さんたちが、誰ひとり感動の場所に呼ばれないという現実に、私は違和感があった。
だから、受賞作の印税を全部注ぎ込んで、受賞パーティーと同じ日に帝国ホテルの別の広間を借り切って、「裏の受賞パーティー」を開こうかなと思っていたんです。そこに、書店員さんたちを招待するつもりだった。でも、コロナがまた流行り出して、「裏」どころか「表」のパーティーも中止になり、この話は宙に浮いてしまいました。
ただ、人数の少ない、小規模のイベントならOKですよと、国が規制を緩和した時期でもあったので、「だったら俺から行くわ」ということで企画したのが、日本全国を巡る「今村翔吾のまつり旅」です。
全国の書店を回った
「まつり旅」で得たもの
直木賞受賞後の記者会見で、「時勢を見て、47都道府県の書店にお礼に回りたい」と宣言しました。訪問先は、こちらが選定するのではなく挙手制、「手を上げてくれたところには全部行くよ」というスタイルです。書店だけではなく、全国の学校図書館にも希望を募りました。私は生徒の一言に背中を押されて作家になったのだから、「夢は叶うよ」というメッセージを子供たちに伝えたかったんです。







