米ミシガン大学社会調査研究所が毎月発表している消費者信頼感指数は、近い将来の経済状況に対する消費者の期待感を示しており、これも参照されることが多いものです。コロナ禍以降、在庫確保のための輸送量増加が多くみられたことから、小売在庫の動向も注目されるようになっており、在庫関連の指標も確認することが増えています。

 さらに、消費のもととなる雇用がどうなっているかも判断材料になります。雇用が増え、失業が減ればお金を消費できる人々が増加するため、小売売上高も増えると考えられるからです。参考にするものとして、米国では、実質GDPの約95%を占める非農業部門の雇用者数のデータがあります。また失業率も非農業部門雇用者数と並ぶ重要な雇用統計で、米国商務省センサス局から毎月発表されています。

 ほかにも、コンテナ輸送量は住宅市況や自動車製造の状況などの動向との関係が強いことが知られています。たとえば北米航路では、住宅関連品の荷動き量が全体の約20%を占めており、欧州航路でも一定のシェアを持っています。

 新築もしくは中古で住宅が取引されれば、建材、家具、カーテン、カーペットなど多くの派生需要が発生しますし、引っ越しに際しては家電製品の需要も生み出します。そのため、米国の住宅許可件数は1年程度、荷動きの動向に先行するわけです。

住宅価格や原油価格も
コンテナ輸送量を左右する

 米国においては住宅価格とモノ消費との関係が強いとの研究もあり、高橋伸服氏は2003年から2021年のデータについて住宅価格とモノ消費の前年比伸び率の相関係数が0.84と高いことを指摘しました。高橋氏は米国で持ち家の価格が上がった際に、資産効果を通じて家主が住宅関連品に限らずモノ全般の購買を増やしてきたことを示唆していると説明しています。

 さらに前述のように、モノ消費はコンテナ輸送量と強い関係を持っています。実務者の間ではこのような関係が直感的に知られており、ケース・シラー指数など住宅価格指標もコンテナ輸送の動向を見るための参考とされているのです。

『コンテナ海運が世界を動かす』書影コンテナ海運が世界を動かす』(松田琢磨、KADOKAWA)

 これと同じことが、自動車製造でもいえます。欧米で自動車生産を増やす場合、アジアからの自動車部品の輸入が増加します。自動車部品は種類が多く、住宅と同じように派生需要が発生します。そのため、欧米での自動車製造の状況や需要の動向はコンテナ輸送でも重要になるのです。とくに日本からの輸出においては、自動車部品やタイヤなど関連する品目がコンテナ貨物の上位を占めており、重要性がさらに高いといえます。

 もちろん世界経済とコンテナ輸送の関係について詳細に知るためには、製品や商品市場以外にも、部品や原材料、中古品やリサイクル品の市場規模や市況などを知ることが必要です。

 ほかにも原油などのエネルギー価格など各国・各地域に関する様々な情報も求められますし、今後は船舶の位置を示すAISデータや衛星データなども使用されていくと考えられます。

 様々な情報を得る必要がある状況は、コンテナ船で運ぶ貨物のすそ野がそれだけ広く、企業の経営や生産管理においてコンテナ輸送が重要な位置にあることを意味していますし、広範なデータを解析してコンテナ輸送の動向を深く理解する動きは今後も進んでいくでしょう。