「おそらく、私に見られた際のカムフラージュとして、無害な知人の名前で登録していたのでしょう。その小細工自体が、計画的な隠蔽(いんぺい)の証拠だと思ったら、手が震えて、足の力が抜けて、その場に座り込んでしまいました」

 知佐さんはそう言って、涙を拭いました。

 たった3文字。

 でも、その3文字が、10年分の信頼を一瞬で壊したのです。

「今思えば、ずっとサインはあったんです」

 知佐さんは涙声のまま話し続けました。

夫の酒量が減って
立ち直ったと喜んだ妻

「今年に入ってから、夫の外出が急に増えました。結婚してから歓送迎会くらいしか行かなかった人なのに、毎週のように付き合いがあると出かけるようになって」

 その頃は、毎回泥酔状態で帰宅していたそうです。

「何か良からぬことをしている緊張感や後ろめたさを、お酒で紛らわせてたんだと思うんです。家庭で向き合うべきことから目をそらして、まともに話し合いにも応じなくなりました。そういう人になってしまったんです」

 しかし、2月半ばごろから異変が起きました。深刻だった酒量が急に減り、家ではほとんど飲まなくなったそうです。

「最初は喜んでいたんです。やっと立ち直ってきたんだって。でも違いました」

 さらに、今まで絶対に選ばなかったような服を買い始め、スマートフォンをもう1台契約していたことも判明しました。

 私は、その変化に強い違和感を覚えました。

 知佐さんの言葉や子どもの存在では変わらなかった人が、別の誰かのために変わろうとしている。

 酒を減らし、服を変え、外へ出るようになっていたのです。

 私は静かに言いました。

「一緒に、真実を取りに行きましょう」

 調査日は、啓人さんが「今週末、前職の後輩とゴルフに行く」と話していた日に設定しました。

 その予定を聞いた知佐さんは「ゴルフなのに家を出るのが9時過ぎなんです。しかも前職で仲の良い後輩の話なんて聞いたことがなくて」と、不自然さを感じていました。

 私は不貞のタイミングだと確信しました。

 調査は3人体制で行いました。