Photo by Shintaro Iguchi
工業用ミシン大手のJUKIは長い苦境から脱却できるのだろうか。近年は中国メーカーとの競争が激化し、世界シェアトップ企業であるにもかかわらず3期連続最終赤字に沈み、株価も長期低迷している。連載『重工・機械 成長への羅針盤』の本稿では、JUKIの成川敦社長を直撃し、中国勢への対抗策や構造改革の現在地、そして知られざる「銀行との心理戦」の舞台裏を語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 井口慎太郎)
「中国勢とシェアを争っても勝ち目はない」
JUKI社長が語る赤字転落の真因
――JUKIの2025年12月期の売上高は887億6100万円、営業利益は26億6200万円でした。工業用ミシンの世界シェアがトップですが、22年12月期~24年12月期は3期連続で最終赤字を計上しています。事業環境をどう見ていますか。
ジャック・テクノロジーなどの中国のミシンメーカーとの競争激化が(3期連続赤字の)一番の要因です。(同社は)価格が安いだけでなく、製品のレベルも生産能力も高いです。
24年7月に私が社長に就任する前は、価格を中国勢と同じくらいまで下げてでもシェアを維持しようとしていました。「世界シェアトップ」という立場にしがみつきたい思いがあったと思います。今では利益を重視してラインアップを(採算の良い)ハイエンド機種に絞り、低採算機種の生産はやめました。25年12月期は最終黒字となりました。
――アパレルの生産拠点が中国から、人件費が安い東南アジアやインド以西へシフトする流れがあります。ハイエンドな工業用ミシンで安価な製品を売る中国勢に勝ち続けられますか。
「逆に、なぜここまで生き残ってこられたのか」と考えました。中国勢は資本力も技術者の数も(日本勢などを)圧倒しています。業績を見れば、もっと早く会社がなくなっていてもおかしくなかった。考え抜いた結果、生き残っている理由がわれわれの強みだと気付きました。
工業用ミシンは買ってすぐに動くものではなく、縫い方や製品に合わせて継続的に手を加え、メンテナンスや一部改造をしなければ機能しません。アパレルの生産において「少量多品種化」が進む中で、頻繁に部品を入れ替えたり改造したりする必要があります。
アフリカ市場では、中国勢が先に安価な機械を流通させましたが、メンテナンスができないため放置されて動かなくなっているケースが多々あります。そこにわれわれが遅まきながら行き、機械を直して動かすことで、次回の買い替えでは「JUKIの機械を買おう」という流れができています。また、欧米の有名ブランドのアパレル(の仕事)を受注する縫製企業は、品質や納期に非常にこだわっています。
――25年には希望退職者を募集しました。現在進めている構造改革は今何合目でしょうか。
悪いところを改善する「止血」は、8割ぐらい終わっています。人員合理化もほぼ完了しました。
ただ、縫製工場のデジタル化を進めて「モノ売りからコト売り」に転換するビジネスモデルはまだ2~3合目です。社内では「まずは縫製事業だけでも10年間は食べていけるだけの状態にしよう」と言っています。今は売上高の75%、利益のほぼ全てを縫製事業が占めています。第2の柱である産業機械事業や、第3の柱である他社の光学機器や医療機器を受託生産する事業で会社全体を支えることは現状では難しく、強化するには時間もお金もかかります。
JUKIの成川敦社長による改革は不採算製品からの撤退にとどまらない。売り上げやシェアを追う企業文化、長い回収サイト(売掛金を計上してから、実際に入金されるまでの日数)、金融機関との関係まで含めて、会社を変えようとしている。次ページでは、元銀行員でもある成川社長に、V字回復の戦略を語ってもらった。また、同社長が考える次期社長の条件とは。次のトップも、引き続き銀行出身者が務めるべきだと考えているのだろうか。







