
農林中央金庫が2024年度、1.9兆円の最終赤字に沈むことの農協への影響はさすがに大きかった。ダイヤモンド編集部の独自企画「JA赤字危険度ランキング」で、190農協が赤字に転落することが分かった。特集『JAグループ崩落』の#6では、全国の農協の合計で、年間1600億円に及ぶ減益ショックのインパクトをJA別に明らかにする。43億円もの赤字に陥る試算結果が出た大規模農協とは。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
「農協の半分が赤字になる」という組合長の懸念が
現実味帯びる、衝撃の試算結果!
「全国の農協の半分が赤字になるのではないか。それだけ大変なことだ」。JAしまねの石川寿樹組合長は2024年6月の総代会で、組合員らを前に、農林中央金庫の巨額損失の農協への影響についてそう語った。
ダイヤモンド編集部が、農協の損益を試算したところ、石川組合長の懸念が決してオーバーなものでないことが分かった。
かつて農林中金は年間641億円を配当として農協などに還元していたが、24年度に巨額赤字に沈むことが分かると配当を停止した。損益シミュレーションでは、今回もリーマンショック後と同様、無配から復配しても、配当額は当面、200億円程度にとどまると想定した。
さらに、農協の最大の減益要因となるのは共済(保険)事業の縮小だ。職員が営業ノルマを達成するために、本来不要な共済に自らが加入する“自爆営業”の問題が表面化し、事業の推進を自粛したことや、営業の対象となる組合員らが高齢化して需要が減っていることが影響している。
実際、農協の共済事業総利益は2年連続で、前年比5%以上減った。試算では、この減益傾向が続くと想定した。
三つ目の減益要因が、職員の人件費の増加だ。農協は中堅・若手の人材流出に悩んでいる。人材の引き留めには、最低でも年1%程度人件費を増やさなければならないことを踏まえた。
以上の三つの要因から5年後の全農協の減益想定額を算出したところ、年間1619億円に上ることが分かった。
さらに、ダイヤモンド編集部は全国461JAの財務データを入手し、合計1619億円の減益で農協ごとにどの程度経営が悪化するかを試算した。すると、190JAが赤字に転落することが判明した。
次ページでは、全国461JAの5年後の減益額や利益額を一挙に公開する。