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日米金利差が縮小しているにもかかわらず、円安・ドル高が続いてきた。背景にあるのは財政不安ではなく、国際収支の構造変化や新NISA(少額投資非課税制度)を通じた海外投資、さらに日本株の相対的な上昇に伴う為替ヘッジの円売りだ。日本株高が円安を招く逆説的な仕組みを、資金フローと回帰分析から検証する。(龍谷大学名誉教授 竹中正治)
金利差だけでは
説明できない円安
日米の協調円買い介入が、円安相場に調整局面をもたらした。しかし、円安の持続的な是正のためには日銀が金利の引き上げテンポを速めることが欠かせないと指摘されている。確かに、一般に外国為替相場は内外金利格差とその変化の影響を受ける。ドル円相場ならば、日米金利格差の影響を受ける。経済理論では「金利平価原理」と呼んでいる。
しかし、2000年代以降の実質ドル円相場の変化を見ると日米金利格差では説明できない趨勢(すうせい)的な円安へのシフトが起こっており、その要因として考えられる事情を昨年9月の論考で二つ提示した。『26年は円高ドル安への揺り戻しで「1ドル130円」か、FRB利下げ・日銀利上げの金利差縮小効果を試算』(2025年9月4日)
手短にその二つの要因をまとめると、第一は、国際収支上の経常収支の内訳変化だ。日本の年間経常収支黒字は、2000年代の年平均17兆円弱から20~25年は年平均22兆円まで増えた。
ところが内訳は貿易黒字が縮小、海外との配当や利息等の受け払い差額である所得収支黒字が主に変わった。これは、日本の製造業が輸出から直接投資による海外現地生産にシフトした結果だ。
貿易収支黒字はそのほとんどが外為市場における外貨売り・円買いになるが、対外直接投資からの外貨所得はおよそ半分が現地に再投資され、外為市場での円買いにならない。対外証券投資収益も同様と考えられる。
この結果、外為市場での外貨供給曲線がシフトし、需給均衡点が外貨高・円安に動いてきた。これは90年代後半以降の構造的円安要因である。
第二は、国際収支上の資金の出入りである金融収支の変化だ。24年1月の新NISA(少額投資非課税制度)開始で、米国や世界株価指数に連動する投資信託による海外株式投資が急増した。しかもそのほとんどは為替リスクヘッジ無しの形であり、投資信託協会によればその買い越し額は新NISA開始以前の年間平均1000億円台から8兆~10兆円規模に拡大した。
その分だけ外貨需要曲線をシフトさせ、やはり均衡点が外貨高・円安に動いた。これは24年以降の円安要因として働いている。
次ページで、この二つの要因を踏まえた上で最近の円安の要因を検証する。







