ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワードPhoto:PIXTA

連載『ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワード』の今回のキーワードは「高額療養費制度」です。高額な治療を受けた際の自己負担に上限を設ける重要な安全網ですが、2026年8月から負担上限が引き上げられました。患者への配慮と現役世代の保険料抑制をどう両立させるのでしょうか。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

高額な治療から家計を守る
医療保険の「最後の安全網」

 今回のキーワードは「高額療養費制度」です。

 高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払う自己負担額が、1カ月当たりの上限額を超えた場合に、その超過分を公的医療保険から支給する仕組みです。

 私たちは、健康保険や国民健康保険などの公的医療保険を利用して、診察や手術、投薬などを受けます。一般的な現役世代では、保険診療にかかった医療費の原則3割を患者が負担し、残りの7割を健康保険組合などの保険者が負担します。

 もっとも、大きな手術や長期の入院が必要になったり、高額な治療薬を継続的に使用したりすると、3割負担であっても家計への負担は重くなります。

 そこで、年齢や所得に応じて月ごとの自己負担額に上限を設け、上限を超えた分を支給するのが高額療養費制度です。医療費がどれほど高額になっても、保険診療分については患者の自己負担が一定額以内に抑えられます。

 ただし、差額ベッド代や入院時の食事代、先進医療にかかる自己負担などは、原則として高額療養費の対象にはなりません。

 高額療養費制度は1973年に創設されました。当時、会社員などが加入する被用者保険では、本人と家族の医療費負担に大きな差がありました。

 被保険者本人の負担は、初診時や入院時の定額負担に限られていました。一方、家族の医療費は原則5割負担で、重い病気にかかった場合の家計負担が深刻な問題となっていました。

 そこで73年、家族療養費の給付割合が5割から7割へ引き上げられ、家族の自己負担は原則3割となりました。同時に、自己負担が一定額を超えた場合に超過分を支給する高額療養費制度が導入されました。国民健康保険でも同年、高額療養費制度が創設されています。

 その後、84年10月には被用者保険の本人負担が1割の定率負担となり、高額療養費制度の対象も本人へと広がりました。本人負担は97年に2割、2003年に3割へと段階的に引き上げられ、制度の重要性は一段と高まりました。

 この高額療養費制度が、26年8月1日から改正されました。所得に応じて定められている月額の自己負担上限が、全体として引き上げられています。

 政府が改正の理由として挙げているのは、高齢化や医療技術の高度化による医療費の増加です。患者の自己負担を一定程度増やすことで、医療保険から支払われる給付費や公費を抑え、現役世代を中心とする保険料負担の軽減につなげる狙いがあります。

 一方、高額療養費制度を繰り返し利用するがん患者や難病患者にとって、上限額の引き上げは治療の継続や生活そのものに影響を与えかねません。

 次ページでは、改正前と改正後の上限額を収入別に比較します。加えて、25年にいったん白紙撤回された旧改正案との違いや、患者負担と医療保険財政への影響を検証します。