ブラケット・クリープへの直接の対策は
課税最低限や税率区分、控除の物価連動

 では、ブラケット・クリープに対処するには、どのような制度が必要なのか。

 第一に必要なのは、税制パラメータの物価連動だ。

 具体的には諸控除額や税率区分などを、物価上昇に応じて調整する仕組みだ。物価が上昇し、名目賃金がそれに応じて上がっただけなら、本来、実質的な税負担率が上がるべきではない。実質所得が増えていないにもかかわらず税負担だけが増えるのは、隠れた増税だ。

 したがって、インフレに対して中立的な所得税制を作るには、まず税率区分や控除額を物価に応じて調整する必要がある。

 政府税制調査会でも、「物価の上昇等を踏まえた基礎控除等の額の適時の引き上げ」が議題になっている。また財務省資料でも、基礎控除が定額であるため、物価上昇時に実質的な税負担が増えるという問題が示されている。

 さらに25年度税制改正では、物価上昇局面における税負担調整として、所得税の基礎控除と給与所得控除の最低保障額の引き上げが行われている。これは、インフレ下で税負担が過度に増える問題への対応として評価できる。

 しかし、これで十分とはいえない。これらの見直しは部分的であり、税率区分、各種控除、給与所得控除、住民税を含めた体系的な物価連動制度として確立されているわけではないからだ。

インフレに対する「手取り」確保
給付付き税額控除は「補完」の役割

 一方で税率区分や控除額を物価連動させるだけでは、十分ではない。なぜなら、所得税を十分に納めていない低所得層には、減税の効果が届きにくいからだ。

 例えば所得税をほとんど払っていない人に対して、所得税の基礎控除を引き上げても、実際の減税額は小さい。そもそも納税額が少なければ、控除によって減らせる税額にも限界がある。

 そこで必要になるのが、給付付き税額控除だ。これは、まず税額控除によって納税額を減らし、控除しきれない部分については給付を行う仕組みだ。これにより所得税を十分に払っていない層にも、支援を届けることができる。

 ブラケット・クリープへの直接的な対策は税制パラメータの物価連動であり、給付付き税額控除は、課税最低限や控除だけでは十分にできない低所得層の支援を補完する制度だ。

 両者は代替関係にあるのではなく、組み合わせて初めて意味を持つ。

 つまり給付付き税額控除は、ブラケット・クリープ対策としては、あくまで補完策であり、それだけでは機能に限界がある。