今回の公表案は消費税減税よりは
筋は良いが、給付だけでは不完全
政府は、レジ改修などの準備期間などの問題などから批判もあるなかで、物価高対策として、食料品の消費税ゼロを、たとえば「税率1%」に修正するなどして、あくまで「つなぎ」で実施する方針のようだが、全体の方向として、家計などへの支援策は給付付き税額控除を軸において進めようとしていることは評価できる。
物価高対策として消費税減税を行えば、低所得層だけでなく高所得層にも広く恩恵が及ぶ。また財源の喪失も大きくなる。このため、政策の焦点がぼやける。
これに対して、給付付き税額控除であれば、所得の低い層に支援を集中させることができる。消費税減税のように税収基盤を大きく損なうのではなく、必要な層に絞って支援することができるからだ。
したがって、消費税減税より、給付付き税額控除を制度化する方向のほうが望ましい。
重要な問題は、それを今回、公表した単なる給付金制度にとどめるのか、それとも所得税制全体のインフレ調整とも結びつけるかだ。
この観点から見ると、今回の案は極めて不完全なものだ。
なぜなら、制度導入時は、税額控除(減税)は組み合わせず、所得に連動した給付に一本化するとしているからだ。
今回の公表案では、どれくらいの収入の人にどれくらいの給付をするか、具体的なものは決まっていない。
上述したように給付付き税額控除は、非課税ラインの低所得層にも一定の給付が行われるのなら、意味がある。そして物価上昇の影響は、所得の低い層ほど重く、食料品や光熱費など生活必需品の負担が大きいから、低所得層に的を絞った給付を行うことには合理性がある。
しかし、ブラケット・クリープへの対応策として考えると、給付金が具体的にいくらになるかにもよるが、給付金だけでは、名目所得の上昇によって中間層の実質的税負担が増える問題を是正できない可能性がある。税率区分や控除額が物価に連動していなければ、インフレによる隠れ増税は残る。
したがって、給付中心の制度で出発するにしても、それを最終形と考えるべきではない。それは低所得層支援としての第一歩にすぎず、ブラケット・クリープを防ぐには、税制パラメータの物価連動という制度改革を、別途進める必要がある。
注1 「ブラケット・クリープによる『隠れ増税』の試算」(第一ライフ資産運用経済研究所星野卓也、2026年5月8日)。
(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)







