社会保障国民会議の実務者会議= 4月8日、国会内 Photo:JIJI
高市早苗首相が所信表明で掲げた給付付き税額控除は、中低所得層の手取りを増やし、税と社会保障を一体で見直すための重要な改革である。ところが、国民会議での結論は税額控除を棚上げし、「給付に一本化」となった。本来の制度趣旨を失わせないために何が必要なのか。(昭和女子大学総長顧問 八代尚宏)
給付付き税額控除を
「給付に一本化」に矮小化するな
高市早苗首相は、令和7年10月24日の所信表明演説で「税・社会保険料負担で苦しむ中・低所得者の負担を軽減し、所得に応じて手取りが増えるようにしなければなりません」として、「超党派かつ有識者も交えた国民会議を設置し、給付付き税額控除の制度設計を含めた税と社会保障の一体改革について議論してまいります」と明言した。
現在、物価上昇の下で減税を求める声が高まっている。しかし、これまでの基礎控除の引き上げのような形での減税策は、高所得で税率の高い階層に有利な、ポピュリズム的なものである。
これに対して税額控除は、所得水準にかかわらず、同額の減税となるため、相対的に低所得層に有利となる。さらに通常の減税では、所得税の課税対象以下の真の貧困層には恩恵が及ばないため、その代わりに減税分を給付する「給付付き税額控除」が、もっとも所得格差の是正に有効な減税策となる。
本来は資産所得や家族の所得も考慮することが望ましいが、当面は個人単位の勤労所得(給与所得者と自営業)を対象とした簡易版の実施を先行することになった。
この給付付き税額控除は、高市首相が自民党の総裁選挙以来掲げてきた重要な公約の一つであった。しかし、その諮問を受けた社会保障国民会議での結論は、税額控除等を含めた税制改革は棚上げし、「給付に一本化」となった。
しかし、今後、デジタル庁のシステムが完成しても、肝心の税額控除を導入するための税制改革を行うという保証は全くない。こうした首相の意向を無視した、あからさまな換骨奪胎のケースは、過去にもほとんど例がないのではないか。
本来の給付付き税額控除の仕組みは、課税最低限以下の層に対してのみ給付を行い、その就労を促進する機能があるが、今回の「給付に一本化」では、所得税を支払う中所得層にも、幅広く給付を行う点で、過去の給付金と大差はなく、しかも恒久的なものという点でより問題が大きい。
次ページでは給付のみ案の課題を指摘するとともに、給付付き税額控除の本来のあり方について論じる。






