忘れられがちな
表彰の真の目的

 多くの会社では、年度のはじめや半期ごとにキックオフや社員総会を開催しているのではないでしょうか。そのイベントの中で、期間ごとのMVPや優秀マネジャー、優秀チームなどを表彰するコーナーを設けている会社も多いでしょう。

 そこで考えてほしいのは、その表彰式は「何のために行っていますか」「最大の効果を出せていますか」ということです。

 表彰する目的は、いろいろあります。本人のモチベーションアップのため。「次は自分もあの場所に立ちたい」と思ってもらい、社員の士気を高めるため。チームの一体感を高めるため。まだまだほかにもあるでしょう。

 コンサルタントという仕事柄、多くの会社の表彰式を見てきましたが、その目的の中で、大切なのに忘れられがちなことがあります。それは、表彰式は表彰されるほどの良い行動を共有して、ほかの社員にも真似してもらい、組織全体の仕事の質を高める機会であるということです。

「忘れられがち」と書いたのは、表彰者の受賞コメントが、もったいないケースが多いからです。「支えてくれた上司とメンバーのおかげで、目標を達成できました。このような賞をいただくことができ、本当にありがとうございます」だけで終わってしまうことがほとんどなのです。

 受賞のコメントで伝えてほしいのは、どのような思いで取り組んだのか、具体的にどのような仕事の工夫をして優秀な成果を出せたのか、そのノウハウです。

4つの工夫で表彰式を
全社員の成長のきっかけに

 表彰式をきっかけに、受賞者の仕事のやり方をみんなが真似してくれるようになるには、聞いている側に「自分ごと化」させる工夫が必要です。

「自分ごと化」とは、対象物を自分自身の問題としてとらえ、当事者意識を持って主体的に物事に取り組むようになることです。

 実際に工夫している例を紹介しましょう。

(1)まず、受賞者には「聞く人が参考になるような、業務で工夫した点を、コメントに具体的に織り込んでくださいね」と依頼します

(2)当日は、会場のみなさんに、自分の仕事に活かすという視点で聞いてもらうようにお願いします

『残念なリーダーにならないための マネジメント50の心理法則』書影残念なリーダーにならないための マネジメント50の心理法則』(松岡保昌、岩渕美香、日本実業出版社)

(3)受賞者には、仕事のコツを、具体的な資料なども用意して語ってもらいます。中には、事前に映像にとっておいて、その場で流すこともあります

(4)そのうえで、会場から受賞者に質問をしてもらいます。そうすると、「私の場合には、通常はそのようにはうまくいかないのですが、なぜうまく進めることができるのですか?」などと、リアルな突っ込んだ質問が出てきます。そこからのやりとりが重要なノウハウの共有になるのです

 つまり、単なるいい話から、自分の仕事に関係する話、自分が取り入れるべきノウハウへと変わっていくのです。ちょっとした工夫で「自分ごと化」できます。

 チームを強くするリーダーは、優秀な仕事のやり方を、みんなが真似しようと思うような雰囲気づくりができるのです。